第4話 卓上扇風機 風鬼 セン の提案




 


 時は20XX年。


 大量の花粉により夏の日差しが多少マシになった世界



☆☆☆



 ー 高校生 大海 ソウマ (おおみ そうま)の教室 6月 ー



 親里離れて早2か月。


 バイトや仕送りで何とか生きてはこれた。


 しかし電気代の高騰によりクーラーの使用はできない貧乏学生。



 今回の男主人公 大海 ソウマ はスマホで対策を調べ中。



 首に着ける扇風機や保冷剤がバカ売れするほど皆節制に励んでいた。


 

 「いや俺引きこもり体質だし、こうプールとか海とかキャンプとかさ

リア充は何であんな元気なんだよ」


 

 彼の調べ物がコンセント給電の扇風機になるのは必然だった。


 このままでは彼は購買部と寮を行き来するだけの学園生活になってしまう。



 数日後見かねたAI女教師がある提案をする。



 「ヒューマンドリーム24って会社が扇風機の無料テスターを

探しているとか。


 大海君受けてみれば?きっと楽しい夏休みになるから♪」



 

 「なんで俺が扇風機探しているのバレてるんすか?」



 「・・・安易な詮索はしないのが賢い生徒よ?


 君は優秀だから学校推薦が欲しいのでしょ?」眼鏡キラーン


 

 「こわっ!!


 まあ無料なら試してみるか。ありがとう先生」



 実はこの先生もヒューマンドリーム24社製造AI。


 無意識とはいえ最良の選択をすれば同社に行きつくのは必然。




☆☆☆



 ー ソウマの部屋 6月中盤 ー




 狭い寮にぴったりな120cmぐらいのコンセント対応人型AI。



 箱に入っている”彼女”に最初は驚いたソウマだが

AIが肉体を持つ時代、

無料であることを再度確認し起動準備に勤しむ。 





 「コンセントを刺すと自動で電源が入るのか。

で、風量調節はAIがやってくれると」差し込みー



 「初めましてっ!!!


 あたしは 風鬼ふうき セン!!よろしくね♪


 じゃなかった!!この度はひゅーまんどりーむ24?の

てすたー?に応募いただきありがとうございます。


 ・・・初めまして!!!」


 

 「いやカンニングペーパー丸見えだし!!!


 というかパッケージと違って角生えてないし」



 「危ないので外付けってヤツ!マグネットでひっつくよ!」


 「磁石かよ!!!!」



 おでこと生え際の間に2本の角を取り付けるセン。


 白っぽい半袖と赤黒チェック柄のスカートが揺れ、

背中にランドセルを背負っておりリコーダーの袋が突き刺さっている。




 そして箱からうちわを取り出し。



 「ええとご主人様?マスター?先生?提督?ドクター?指揮官?

なんて呼べばいいの?


・・・・・けんさくしゅーりょー!そうちゃん!!!」



 「なっ!!!どうして俺がAI彼女に呼ばせてる名前を!!!


というか少し前に似たようなことが・・・・・」



 「気のせーだよ?気のせい」あせあせ



 人間所有のスマホのセキリティは無いに等しい。


 そのうえで金銭がかかわらない情報の閲覧は罪には問われない。



 「ふおおおおおおおおおおお」ブンブンブン


 「うるせえええええええ!涼しいけど!!!!」



 センはうちわをチカラいっぱい動かした。


 見た目が幼い子供が全力を出している姿には感動するものですよ?

そうちゃん?・・・いや失礼ソウマ君。 



☆☆☆



 ー ソウマとセンの部屋 7月 ー



 「あっつっつつううい!そうちゃん!クーラー!後アイス!!」


 「扇風機がクーラー要求すんなよ!!!!


 冷凍庫のアイスは・・・・ねぇな。今から買ってくるから留守番よろしく」


 「うい~」



 その後ソウマが買ってきたアイスでひと悶着あった。




 「ふっふっふ、ここに半分こできるアイスがあるじゃろう?」


 「ああ、あるな」


 「ふたつともあたしの物っ!ぐぎぎぎ、そうちゃん!これ開かない!!!」


 「わがままかっ!!!わかったよ。ちゃんと半分俺に寄こせよ?」



 半分こされた青いソーダ味のアイスを楽しむ2人。


 センの横暴も非力な体では可愛いイタズラにすぎない。



☆☆☆



 ー ソウマとセンの部屋 夏休み ー



 「そうちゃん!プール!プールをよーきゅーします!!」ドン☆


 「スク水着て準備万端だなぁオイ!ええと俺の水着何処だっけかな」




 「そうちゃん!夜店がこの近くであるから行こう!!!」ぐいぐい


 「屋台のクジは引かねぇからな。あれ当たんないし」



 「そうちゃん!キャンプ行こう!!」スマホチラ見せー


 「流石にそんな金ないから!一緒いっしょにカレーでも作るか!」



 「そうちゃん!花火!花火!!!」きゃっきゃ


 「んー、この寮からでもギリ見えるか」



 「そうちゃん!そこ間違ってるから!!!」指ビシィ


 「嘘!!!夏休みの課題解けるのかよ!!普段子供っぽいのに!!」



 「そうちゃん!そうちゃん!そうちゃん!!」ガクガク


 「いでででで、抱き付くなって!ホラー映画嫌いなのかよ!!」 




 「そうちゃん!!!!!!!!!!!!!!!!!!」ブルブル


 「あー雷か。一緒いっしょのベッド入るか?」



☆☆☆


 ー ソウマの教室 9月 ー



 「っと先生。ありがとうございます」


 「?文脈が見えないわね」


 「あー、扇風機勧めてくれたことですよ。


あいつ、うちわを持たない日が多かったけど夏休みは楽しかったので」


 「そうね。恋をしている表情ね♪」


 「はぁああああああ!俺が恋ぃ!!!!!あいつに!!!!」



 ソウマは気が付いていないが先生は女のカンが冴えわたっていた。


 確かに扇風機としてみれば赤点だが代えがたい思い出を共に過ごした

センはソウマの彼女といっても過言ではない。



☆☆☆



 ー ソウマとセンの部屋 12月 ー



 「そうちゃん!寒い!!!」


 「扇風機が寒がんなよ!ったく今日も布団で温めあう日々か。

就職して給料入ったらコタツ買ってやるからな!」


 「みかんも!!!!」


 「ああ、アイスも好きなだけ食っていいぞ!!!」


 「・・・・・アイスは半分こがいいな」





☆☆☆



 ー ヒューマンドリーム24社長室 1月 ー


 「☆5評価 氏名 大海 ソウマ



 結論から言えば今回のテスターを受けて非常に満足しています。

 

 流石にクーラーには勝てませんが彼女はうちわで応援してくれます。


 

 しいて問題点を上げるならば、扇風機としてより

”冬用の湯たんぽ”として売り出すべきと進言します。


 人肌で温めあうと気持ちがよいので」




 王と平社員は見つめ合い結論を下す。




 王・平社員 「「そのとおりザマス!!!!!!」」



 その後湯たんぽに仕様変更された”新型”の風鬼 センが発売されたが

初代持ちのユーザーは更新せず”扇風機”としての彼女と

末永く過ごした。


 王も愛を感じたユーザーとAIを引きはがすほど商売優先ではないからだ。




♡♡♡


あとがき




大海 ソウマ  おおみ そうま


・名前の由来はオゾン層。o3でオゾン。おおすりー から おおみ。


・扇風機AIがクーラーを使う本末転倒が書きたくて

 オゾン層の名前を採用した。


・センに依存することで彼の心の層は破壊されていくことになる。





風鬼 セン ふうき せん


・ストレートに扇風機


・ダイ〇ーに売っていた300か500円ぐらいの扇風機がモチーフ


・例の如く平社員のネーミングという設定だが

 風鬼とかセンの名前が予想以上にカッコよかったため、

 名前ダサくね?的な描写は見送りとなった。

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