第5話 オーブン 恋次 シデン の提案
花粉飛び交う20xx年。
テレワークは福利厚生の
☆☆☆
ー 縁導 アイン (えんどう あいん)の部屋 6月 ー
「んん~、やはりテレワークは便利。転職はするべきだな」
男主人公 縁導 アイン は前の職場でテレワークを解除された。
上からの命令に納得しなかったアインは辞表を提出。
ついでに残った有給も全部消化しその隙に転職活動をし成功。
しかし彼は非常に自堕落だ。
会社の通勤はもとより、動画を見る際も1,25倍速で再生し
オーブンレンジで焼いた完全栄養食のパンにソーセージを挟み
ホットドックにして食べる。
野菜はビタミン剤でカバーし、買い物もネット通販。
☆☆☆
ー アインの部屋 7月 ー
アインの自堕落の欲求は加速していた。
彼の朝食、ホットドックを焼くオーブンが壊れて2週間後に
ようやく新品を手に入れる決心をしたのだ。
倍速で見ていた動画の広告で料理器具の特集をやっており
新型家具のテスターを募集しているとのこと。
なんせ無料でオーブンが手に入るのだ。
コスパを求める彼が断わる理由もない
☆☆☆
ー アインの部屋 8月 ー
「いやオーブンにAIなんているかなぁ?
まあいいや。モニターを起動してと」
しゃららん♪
「ふふふ、この度はヒューマンドリーム24のテスターに
応募いただき感謝するわ。
私は
「レンジシデン、シデンレンジ・・・・・電子レンジ!!!
見た目と違ってダサくない?!!!!!」
黒に近い紫色のロングヘヤーで肌は透き通るような白。
スタイルもよくあり大抵の言葉で言えば大人っぽい女性。
クールな性格もそれを加速させる。
「こほん、健康管理から恋の相談までお姉さんが全て対応するわ」
「・・・・あー君の役目はホットドッグを温めるだけでいいんだ。
恋なんてコスパが悪いものに興味ないし」
「こ、恋はコスパではないのだけど」ドン引き
アインはネットの影響を受けすぎていたのだ。
これはアイン自体の問題ではなく増え続けたネット中毒者特有のもの。
スマホ導入期にあった”無出生主義”の再来。
☆☆☆
ー ヒューマンドリーム24 社長室 9月 ー
「うわぁ、今回のテスターは相当厄介ね。
まるでどこかの永久凍土平社員君の過去みたいな♪」
「今は溶けたから!!!!」
王と平社員は相変わらずである。
平社員の男性はいわゆるツンデレ
・・・好きな人の前では素直になれないタイプ、
いえ、ツンの代わりにヘタレな”ヘタデレ”だ。
☆☆☆
ー アインとシデンの部屋 10月 ー
シデンは肉体を得た。
自分という物がありながらビタミン剤だのパソコンの動画に夢中な
アインを振り向かせるために。
彼女の恋はオーブンのように熱く燃え盛っていた。
☆☆☆
ー アインとシデンの部屋 11月 ー
シデンの元はオーブンのAI、されど料理に飽き足らず家事スキルも高い。
完全栄養食は20xx年でもコストダウンができておらず味も少ない、
そこに彼女は目を付けた。
色とりどりの食事、完全な栄養バランス。
戸惑っていたアインも徐々に受け入れ始め
次第にシデンとの食事時間も増えていく。
☆☆☆
ー 公園 12月 ー
シデンの頑張りもありアインは、
近所の公園まで出歩く程度に引きこもりが改善された。
コスパコスパ言っていたアインが2人分のアイスを買ってきたとき
シデンはむすっっと頬っぺたを膨らませていたが意図を知り喜んだ。
自分が作った食べ物以外を口にしてほしくないから、
しかし彼の行為は恋人のそれだ。
独占欲と恋人で揺れ動く彼女の思考回路は熱を帯びていた。
☆☆☆
ー アインとシデンの部屋 1月 ー
アインは暇つぶし動画の視聴を止めた。
手の届かない幸せよりも目の前のシデンと過ごしたいと思ったからだ。
確かに都会の
魅力的だ。
理想に憧れるより現実を変えたいと行動をしたのだ。
シデンも自分が作った料理が彼の体を循環していると考えると
ドキドキが止まらなかった。
恋の次・・・・愛が芽生えた瞬間である。
☆☆☆
ー 縁導家 2月 ー
アインとシデンは結婚をした。
いつもと変わらぬ日常。
ただほんの少し変化があった。
シデンの太ももに頭を挟まれ
アインは”人間ホットドッグ”と化していた。
頭を撫でられると脳細胞が破壊され馬鹿になるという迷信がある。
残念なことに彼はもうシデン無しでは生きられないだろう。
恋や愛、妻の作った手料理はもちろん、
パンのような柔らかい柔らかい太ももの感触に溺れ幸せな日々が過ぎていく。
♡♡♡
あとがき
縁導 アイン えんどう あいん
・アインはドイツ語で1、縁導はエンドは終わりを意味する。
シデンと出会わなければ”独り身エンド”は確定だ。
・縁を導くで、えんどう。
・サプリメントは容量用法をお守りください。
恋次 シデン れんじ しでん
・ドストレートに電子レンジ。
・オーブンでいい名前が思い浮かばなかったのは内緒。
・元となったのはアイ〇スオー〇マ製の白のオーブン。
・髪の毛の紫はヒコーキの名前”紫電”より。
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