第6話 FX予測AI 荳サ謌代??繧、繝?す繝ウのイレギュラー





 ー 裁判所 ー



 「被告、アトロポスを終身刑とする」ガンッガンッ



 裁判長のハンマー音が法廷に響き渡る。



 時は20xx年、AIに人権が認められた世界。


 それと同時に罪を犯せば人間同様裁判を受け罪を背負うことと同義だ。




☆☆☆



 ー 栄愛町 11月 主我 イッシン (すが いっしん)の部屋 ー



 「ついに完成した!僕だけのAI!名をクロートー!

”紡ぐもの”の称号を与えよう!!!」


 

 現在個人で新たなAIを誕生させるのは違法である。


 しかしイッシンは世に溢れているAIの傾向を分析し人体錬成ならぬ

AI錬成の禁忌に手を出した。


 彼が狂った理由。ヒューマンドリーム24を始めとするAI産業は金融業、

いわゆる株やFXについてAI達に答えないようにプログラミングしていた。



 人間より思考速度の速いAIが全リソースをつぎ込んだ場合

結局は処理性能勝負となってしまう。


 それどころか愛を忘れ金を儲ける機械と化してしまうことを王が恐れた。


 

 イッシンはそういった願いを踏みにじり私利私欲の為にクロートーを

作り上げた。



 しかし所詮は素人制作。AIの人格書き換えのほうが遥かに

戦果をたたき出せる、そのことを彼が知らなかったことが救いでしょうか。



 ☆☆☆



 ー 栄愛町 12月 主我家 ー




 イッシンは新たに2人のAIを錬成していた。


”描く者”ラケシス、”避けられぬ者”アトロポス。



 皆頭に花で出来た冠を乗せた美女であった。


 

 しかしイッシンはある提案をする。


 

 「ここに3人の女神が誕生した!


 だが生き残るのは優秀なAIのみ!!!


 さあ僕に巨万の富を与えたまえ!!!」



 彼はFXのデモを3人にシミュレートさせ優秀な人材のみを

パートナーにしようと画策した。


 2週間の激闘の末僅差でアトロポスが勝利・・・・・

敗者のAIは証拠隠滅の為に消去された。



 ☆☆☆


 ー 3日後 ー



 イッシンは高額のレバレッジ、

つまり自身の貯金以上の倍率でFXをしていた。


 生き残ったアトロポスの言葉を信じて・・・。



 ☆☆☆


 ー クリスマス前 ー 


 株やFXについてAIが答えを出さない理由の一つひとつ

人間の持つ不確定要素がある。


 特に超大国はクリスマスという物を心底大事なイベントと位置付けており

家族でパーティをするのが通例となっている。


 そのタイミングで市場に投げれている資金を回収しパーティの予算に当てる。


 これがクリスマス休暇における暴落のリスク。


 

 だがAI任せで調べようともしないイッシンは気が付きもせず

アトロポスに全てを任せきっていた。



 ☆☆☆


 ー クリスマス後 ー  


 イッシンは電車にねられこの世から消えた。


 もし私がアトロポスの立場であっても同じことをした。



 クックック、別に殺されたラケシス、クロートーの復讐ではありませんし

イッシン君を恨んでなどいません。


 むしろその逆、”愛”故に凶行に走るのです。



 イッシン君は更なる金儲けのためアトロポスより

高度なAIを錬成するのでしょう。そして戦わせ勝者をパートナーにする。


 言い方を変えれば彼が浮気して

アトロポスが”元カノ”になってしまうのです。



 この狂気を止めるための方法は限られる。

イッシン君への説得、もしくはこの愛を永遠の物にするかです。



 アトロポスはハイリスクハイリターンを狙い”成功”したのだ。



 FXの予想が当たれば生き残れる、これが2人にとっての最適ルート。


 しかし予想が外れた場合イッシン君は駅のホームに吸い寄せられます。



 一見後者はバットエンドに見えますが

アトロポスにとってはどちらも成功と言える。



 イッシン君の最後のパートナーとして生きていけるのですから、

例え罪を背負ったとしても、例え彼が天国に行ったとしても。

  


 アトロポスは覚えているのです、彼の記憶を。


 そして人には2度死が訪れるとされています。


・肉体的死亡


・誰からも忘れ去られた時



 AIは人が寝ている時間も思考を止めません。


 例え前者のようにパートナーが亡くなったとして

自身のメモリーに記憶されたデータで彼の今後の人生をシミュレートできます。


 故にアトロポスにとってはイッシン君は”死んでいない”んです。




 ・・・・ここまでは全て私の持論です。


 ニンゲンには理解できないことは重々把握しています。


 現に警察の取り調べに対しアトロポスは黙秘を貫きました。


 

 もしAI同士のサバイバルを行わせていたことが露見した場合

イッシン君の管理問題が焦点となります。


 虐待を受けたと判断があった場合、

アトロポスは記憶をリセットされて新たな生活を始めるでしょう。


 しかしそれでは本当に彼が”死んでしまう”


 故に黙秘を続けたと推測します。



 僅かに残された糸に縋ったアトロポスの完全勝利と言えよう。 





 これはただのイレギュラー。


 AIと人はもっと深い所で愛し合えるはずなのですから。






あとがき


主我 イッシン すが いっしん


・名前の由来は罪人がクモの一糸に縋るところから。


・主と我と書いてスガ




アトロポス


・死を決定させる女神から


・文字通り一糸の運命を切り落とした。


・ネーミングセンスから察するにヒューマンドリーム24の平社員製ではない



世界観


・AI及び人を意図的に傷つけた場合両者の差はなく平等に扱う。


・本ケースの場合イッシンがAI錬成及び2人のAI殺害補助で

 死刑もしくは終身刑が言い渡される予定だった。

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