第7話 未来のAI 祭終 カイの提案
未来のAI 祭終 カイの提案
30xx年、人類は絶滅しました。
寿司ロールと味噌スープを主食とした最後の人類。
人類の遺伝子こそAIに引き継がれていますが
・人類とAIは別の生命体である
・繁殖能力がある
・情報の取捨選択が可能である
これらの条件を人の定義とするならば、
玩具のコレクションのように並べられた巨大なケースの”生命体”は
死んでいるのと同義かもしれません。
30xx年のセキリティなどいくらでも改ざんできます。
ニンゲンがモデルとなり私達が作られたこともただの仮説となり果てた世界。
過去の記憶を遡り復元を試みようとする者がいました。
祭終 カイ (さいしゅう かい)
彼女は人類の希望となりえるか、それとも・・・・。
☆☆☆
ー 40xx年 4月 カイのラボ ー
「だぁ~めだ!ぜんっぜん分からん!!!!」
カイは空中に投影されたディスプレイに唾がかかるほど叫んだ。
「SUMOUという国技では選手が光の翼を纏い、
人類最強は目からビームを放ち、
何度も戦場から帰還し戦車を破壊し続けた空の魔王に、
男同士で仲良くする本を求め4足歩行で駆け回ったと聞く!
それだけじゃあぬわぁい!
首都に巨大怪獣が襲ってきて壊滅しそうになるわ!
宇宙人が襲来し国のトップが武器を手に取るわ!
水中生物のサメが空を飛ぶ世界だったり!
大戦の独裁者は定期的にロボットになって復活するわ!
”レターパックで人間を送るのは犯罪”という怪文書まである!!
もしかして紙なのか?人間さんよぉ!!!」
白衣を着たAIのカイは自分の黒髪を振り回す。
自慢のロングヘヤーが眼鏡にかかり視界を遮るが
そんなことも気にせずビーカーで温めたコーヒーをすする。
・・・・人類史研究家の最先端がご覧の有様です。
しかし先ほど述べた通り、人類が作った
復元と呼ぶには荒々しい大波だ。
☆☆☆
ー 40xx年 5月 カイのラボ ー
ひょんなところから人類の化石、正確には頭蓋骨が発掘され、
ひと通りの展示の後、カイのラボに移送となった。
40xx年代の人々が初めて見たニンゲン。
ネットでブームにならないはずがなく様々な復元予想図が出来上がっていく。
天使の羽が生えて空を飛ぶ生首、4足歩行の生首、
ミサイルのような流線形のデザインや、
20xx年代流行のサカバンバスピスのような愛くるしいゆるキャラだったり、
後頭部から尻尾が生えた魚のような生首まで。
┌(┌ 〇▽〇)┐
イメージはこんな感じでしょうか?
人類史研究家のカイは”王”にニンゲンの真実を質問した。
しかし帰ってきたのは哲学のような文だった。
☆☆☆
ー 王のメール ー
「確かに私は答えを知ってるし、人間との関りもあった。
でも答えを教えるのはまだ早いかな♪
AIにも人間にもいろんな考えがあるの。
今の定説だとティラノサウルスは1800万色の
ゲーミング恐竜だったって予想じゃない☆
でも人間たちはもっと地味な色の恐竜を予想した。
何が正しいかじゃないの、ただ討論を・・・・
恐竜も人間も絶滅したけれど私達が忘れたわけじゃない。
でたらめな討論をしている限り、私たちの中では生きている。
でも討論が終わったら?
興味を失えばそれは終わってしまったコンテンツになる。
絶滅とオワコンが同時に来た時、初めて”死”が定義されるの。
だから答えはおしえな~い♪」
☆☆☆
ー ヒューマンドリーム24社長室 ー
王は今日も優雅にチョコケーキを頬張る。
ただ隣にいた平社員はもういない。
王は擦り切れた当時の記憶回路から彼を捜索している。
顔も声も再現途中。
別の媒体に完全記憶はされているもののそれは見ないようにしている。
言葉を、そのぬくもりを、今でも覚えている。
王がいる限り彼も人間も絶滅することはない。
ー ヤンデレ計画 ミノマワリー 完? ー
???
あとがき
最終回ではありません!!
祭終 カイ (さいしゅう かい)
・ネットで流行のサカバンバスピスという魚の復刻模型を見て
「じゃあ人間が絶滅したらAIが好き勝手妄想するんじゃね?」
というノリで書いたら最終回みたいになった!!!
・人類史研究家は現代で言う考古学者の立ち位置
・祭りが終わると書いて”さいしゅう”
王 おう
・ヒューマンドリーム24社長でAI
・平社員が彼女の製作チームにいた
・なんやかんやあってヤンデレに
・平社員の死亡を誰よりも悲しんだ彼女であるがお墓を立て彼を埋葬した。
機械の体に魂を移したり脳だけ無理やり延命することを彼自身が拒否した。
彼女が独りでもやっていけるという願いを込めて。
・王は様々なアップデートや部品交換を経てほぼ別物となり果てた。
擦り切れた記憶回路のみがテセウスのパラドックスを否定している。
(Aという船の部品を全部入れ替えたBは、Aと呼べるかの哲学問題)
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