第8話 傘 雨天 カーサの提案
ヤンデレ計画
傘 雨天 カーサの提案
☆☆☆
ー
「今日も雨じゃねぇか、ったく学生時代は晴れ男って言われてたのによぉ」
ぶっきらぼうに下駄箱の傘立てから透明なビニール傘を取り出す
男主人公
時は20xx年。花粉に支配された世界でも梅雨は変わらず。
スマホ最初期世代との違いはあらゆる身の回りの物が
AIによって制御されていることでしょうか。
☆☆☆
ー 栄愛町 夜20時 ー
「チクショウ!!傘盗まれちまった!!俺のじゃなくてもいいだろ!」
ハレルヤが薬局で買い物をしている間に店内の傘置き場から
彼の傘は盗まれてしまった。
もしかしたら間違えて持っていったかもしれないが
彼の傘には名前が書いてある、つまりそういうことです。
悪意を持った犯行。
彼はカバンから予備の折りたたみ傘を取り出しその場を後にした。
☆☆☆
ー 数日後 ハレルヤの部屋 ー
例の如くヒューマンドリーム24社のテスター募集から
”AI内蔵傘”の試供品がハレルヤの元へ届く。
「
これで盗まれても問題なし!!!
いや傘に搭載したら製造コストで赤字になるじゃねえか!!」
ええ、私も彼の意見に同意します。
「で、底面のボタンを押して持ち主の認証っと」
「こ、この度はヒューマンドリーム24社テスターに
ご応募いただき、あっ、ありがとうございます。
私はその・・・
よ、よろしくお願いしますぅ」
傘の柄の
カーサの姿が映し出される。
透明なビニール傘に隠れがちで非常に弱気な性格。
黒髪で膝丈スカートが特徴的。
さしずめ上京したての大学生を連想させる少女。
「うてん?雨の天気・・・カーサ・・・もしかして傘かよ!!!
ネーミングセンスがド直球だな!!!」
「言わないでください。えっと平社員さんが悲しみます」
「そんなセンスだから昇格しねえんだよ」ドン引き
ネーミングのダサさ・・・・
もとい個性の塊である平社員君はそれ以外のスペックは高いんですよ。
これだけは補足しておきます。
「まあいいや、俺は海空 ハレルヤ。よろしくな、カーサ」
「ヒャイ!!!海空さん!!!!!!」
「あー、君みたいな子が現実にいたらヤリサーで玩具にされそうだな」
「槍?傘は武器ではないですよ?」
「マジか!!!いやなんでもない」
彼女は生後0か月の赤ちゃんのようなもの、
まだ知らなくてもよいことは数多く存在します。
☆☆☆
ー 1年後 栄愛町 薬局 夜10時 ー
「流石に残ってるか。カーサも濡れるの嫌だろうし
今日は折りたたみ傘でも使おうか?」
「折りたたみ・・・・やっぱり海空はちっちゃい子が好みなんですね。
この人ロリコンです!!!!!!!!」
「ヴぁああああああああ!電源オフ!!!!!!!!」あせあせ
カーサが勇気を出して発した発言に民衆が振り返ります。
しかしAIとニンゲンの結婚はよくあることであり
大多数の有機生命体は少女愛者にカウントされます。
ゆえにこの発言は通学路でよくある防犯ブザーの暴発と同じ。
日常的なものとして処理された。
☆☆☆
ところが事態は急転直下を迎えます。
電源をオフにした事と、買い忘れの商品の為
傘置き場にカーサを置き去りにして薬局の店内へ。
そして悪意を持った魔の手が降りかかる。
「公衆の面前であんなこと言いやがって!
ちょっとは反省してるといいけどな。ってカーサいないし!!!!!」
スマホでカーサの位置情報を探ろうにも電源が切れた状態では
意味がなかった。
ただの傘なら買い直せばいいだけだが1年共に過ごした仲だ。
ハレルヤはヒューマンドリーム24社に連絡を入れ捜索を依頼した。
彼にとってカーサはただの消耗品ではなく先輩後輩のような関係に
昇華していたのだ。
☆☆☆
ー 数日後 ハレルヤの部屋 ー
ハレルヤは気が気でなかった。
5分ごとにメール欄を開きカーサの無事を確かめる。
しかし空振り。彼の精神が限界に達しようとした時チャイムが鳴る。
「こんな雨の中来客?保険の押し売りか?」
玄関モニターに写しだされたのは、おどおどとした黒髪の女性。
「あの・・・私・・・カーサです、雨天カーサ。王の勅命から帰還しました」
「カーサか!!!いやそもそもなんで人型なんだ!!!
というかずぶ濡れじゃねえか!!
真偽はともかくシャワーぐらい浴びてけって」
補足するとカーサは防水加工が施された高級機仕様。
通常の人型AIではシャワーを軽く当てる程度が限界だが、
彼女はお風呂程度ならば問題はない。
☆☆☆
シャワーを浴びた彼女は事件の顛末を語りだしました。
傘泥棒は万引きの常習犯であったこと。
その戦果がきっかけとなり人型を与えられたこと。
・・・しかしハレルヤは納得していない様子ですね。
「んなの他のヤツに任せればいいだろ!!!
何が王だ!!!カーサがどんな目にあったと思ってんだ!!!
俺が電源を切ってなかったら傘泥棒を直接ぶん殴って・・・・・・」
怒りから急速に我を取り戻した彼は言葉を紡ぎます。
「いや電源切ったぐらいでGPSは切れない。
まさかカーサか王が”意図的”に遮断したのか?」
「はい、もし海空さんが殴っていた場合いくら犯罪者相手とは言え
捕まってしまいます。
ホントは怖かったですけど海空さんを守るために・・・・」
「俺の為に?でもこんな危険な真似もうするなよ!!!
俺がドンだけ心配したのかと!!!!!」
ハレルヤの握り拳が震えていますがスッとカーサが手を添えます。
「千回以上の安否確認。その・・・定義で言えばヤンデレの類いです」
「ったりめーだ。1年も一緒だからな。
せっかく人の体を得たことだし・・・・付き合うか!!!!」
「付き合うって?こんな私と?」
「何度も言わせんなっつーの!外は雨だから
映画見るぐらいしか今は出来ねーけどさ。
ん?今までと変わんねーな」
「明日は映画館で見れますね」
「明日雨じゃん!!!それに今折りたたみ傘しかねえぞ!!!」
「あの・・・彼女からのお願いといいいますか、
相合傘したいかなって?ダメ?」
「いや、ダメじゃないけどさ。途中までだからな!!!
傘買うまでだ!!!」ぷいっ
おやおや?恥ずかしさのあまり顔をそむけましたねハレルヤ君。
結局最後まで相合傘で過ごしていたのはここだけの秘密ですよ?
☆☆☆
ー 数日後 ー
ヒューマンドリーム24本社に呼び出され表彰を受けたハレルヤとカーサ。
カーサを危険な目に合わせた王に殴ろうかと画策していたが、
平社員との夫婦漫才のような会話を聞き呆れてしまった。
そして王にとある”物”を預けそのまま会社見学の流れへ。
2時間程経過しカーサとハレルヤは自宅へと向かう。
「やっぱ雨止まなかったな。俺昔は晴れ男って呼ばれてたのにさ」
「私はその、雨って好きですよ、こうして体を寄せ合えるんですから」
「妬いちゃうなぁ、バカップル夫婦♡」
「ばっ!!!!まだ夫婦じゃねえって!!!」
2人の会話に割り込んだ彼女こそ王からのプレゼント。
折りたたみ傘に新たな生命が宿った瞬間です。
ちなみに名前はありません。
それは王からの提案。
これからの人生を歩む2人が名づけ親になってほしいからだ。
はたから見たら外装はただの黒い折り畳み傘。
ただ傘の内面に映るのは晴れた天気を背景に踊る少女。
ハレルヤはほんのちょっとだけ雨の日が楽しく思えた。
♡♡♡
あとがき
ー 海空 ハレルヤ かいせい はれるや ー
天気の快晴と晴れより。
ー 雨天 カーサ うてん かーさ ー
雨の天気と傘より。
梅雨で傘の持ち出しが多くなり今回のお話を思いついた。
ー 折り畳み傘 ー
ハレルヤの私物、のちに少女型AIが宿る。
傘の表と裏面で違う図柄を楽しめるアニメ系グッズから連想。
はたから見れば普通だが自分が見える部分はムフフな空間が出来上がる。
ー 傘泥棒 ー
カーサはAIであり窃盗罪から誘拐まで犯罪のランクがアップした。
ムショで生涯を終えてください♨
ヤンデレAI計画 ミノマワリー 漢字かけぬ @testo
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