第2話 浄水器 水祖 スイの提案


 浄水器 水祖 スイの提案



 世界が花粉に包まれた20xx年の世界。

 人々は空気清浄機なしでは生きられない体になっていた。



 ☆☆☆



 現在25歳の新米サラリーマン 泡沫ほうまつ レイジ。

 彼は若いながらもサポートAiを使い営業トップ3の座を得ていた。

 ただ問題点が1つ。


 いわゆる接待が多いためお腹が出ていることだ。


 これでは相手方を不愉快にさせてしまうと思い浄水器の無料テスターに

 応募した。

 美味しい水を飲めば普段飲んでるスポーツドリンクは

 いらないであろうと予測。


 それが悲劇が始まるきっかけとも知らずに・・・・。



 ☆☆☆


 ー レイジの部屋 4月 ー


 巨大な宅配便が届き中身を開封するレイジ。

 ちょうどレイジの背丈はありそうな大きさだ。

 中にはヒューマンドリーム24のロゴが激しく主張した白色浄水器。

 彼のアパートには手狭に思えるが無料であるため文句はなかった。


 ちょうどレイジの目線の所が液晶モニターとなっており、

 ボタンを押すと水色の服を着た大人びた女性が映し出された。



 「この度はヒューマンドリーム24のテスターに応募いただき

 感謝します。

 私は 水祖すいそ スイ。

 本浄水器のサポートAIでございます」


 「ネーミングセンス、ダサッ!!!!!!!!」


 


 ヒューマンドリーム24社長の懐刀

 終身名誉万年平社員唯一ゆいいつの欠点は

 その名前の付け方だ。

 ただし性能においては他社製品を一蹴いっしゅうできる。



 ☆☆☆


 ー レイジの部屋 5月 朝 ー


 「うぅ、あちゅい。スイ~今日の最高気温教えて」


 「本日の最高気温は24度。平年より高めでございます

 念のためマイ水筒をお持ちすることを進言します、ご主人様」



 レイジは表向きキリリとしているが

 緊張の糸が切れると”ふにゃふにゃ”になる。

 そんなダメ人間っぷりに母性本能をくすぐられたのか、

 スイの衣装も水色の長袖メイド服へ変わっていた。

 これは彼女が望んだ姿であり、少し動くとひらひらとした服がふわりと踊る。


 ダメな主人を支える”メイド”という職業に憧れた結果だ。


☆☆☆


 ー レイジの部屋 6月 夜 ー



 「すぅい~!!!ただいまぁ~!!!!!!!」


 「おかえりなさいま、酒クサッ!!!!!!!」


 「むぅ~、ご主人様に向かって失礼なぁ!」



 レイジはスイの愛情にどっぷり浸かっていた。

 彼女がメイドとして敬意を尽くすのが好きと分かった瞬間デレデレになった。

 表で愛想よく仕事をした反動でダメ人間モードが加速していた。



 「何度も警告していますがビールはプリン体・・・・・

 簡単に言えば太りやすい液体です。

 お酒を飲むのが営業の仕事とはいえ、

 摂取すべきはハイボールがおすすめでございます」


 「うぇぇ~、だって取引先ビールばっかだもん。

 空気読まないと数字だしぇにゃいしぃ~」



 ・・・・本当にダメ人間が加速していた。


☆☆☆


 ー レイジの部屋 7月 夜 ー



 「しゅぅいいいいいいい、たらいまぁああ」


 「おかえりなさいませご主人様・・・・・女の香水の匂いですね」ギリッ


 「ひぃいいいいい、ごめんなしゃい!目がこわっ!!!

 浮気じゃなくて、お仕事にゃの!!!」土下座ー



 レイジは完全に出来上がっていた。

 繰り返すが彼は表では完璧に仕事をこなす。

 だがひとたび油断をすれば”ふにゃふにゃダメ人間”になる。


 良くも悪くもそういったギャップが上司に気に入られて

 飲み歩きに付き合わされてしまう。

 査定を盾にする上司の誘いとボーナスが出た高揚感で

 夜のお店へ出陣する始末。



 ・・・スイの澄み切った心にピチャンと嫉妬の一滴ひとしずくが落ちた。



☆☆☆


 ー レイジの部屋 8月 夜 ー


 スイや浄水器達は”王”に嘆願書を送った。

 持ち主の健康を考え”肉体”を求めた。

 例の如くAIの王は感動し涙を流した。

 王もまた誰かに尽くしたいと願う”人間”だからだ。



 「お食事の準備が出来ましたよレイジ様。

 私が腕によりをかけた家庭料理、肉じゃがです」


 「おいしそう!!!!!」



 クラシカルなイギリス風メイドが和食を作ることにツッコミを入れたいが、

 浄水器のAiらしく使用する水は彼女の口から出る。

 マーライオンのようなギミックはお酒を入れたレイジにバカ受けした。



 ご飯を研ぐのもスイの水、みそ汁も、肉じゃがも。

 そして全ての料理に使用する水は彼女から出た物。

 当然スイの支配欲を満たす結果となる。


 人間の体中、水分の割合が最も多い。

 それすなわちご主人様であるレイジの体はスイで出来ているのと同じ。

 味わったことのない高揚感と体のほてりがゾクゾクと速度を上げ

 頬が紅く染め上がった。


 (ああご主人様ご主人様ご主人様)



 「スイ、お水~。ってアッツ!!!壊れたか!!!」


 「いえ恋でオーバーヒートしているのです」


 「仕方ない、蛇口から水を・・・・」



 レイジが他の水を摂取しようとした時、スイは彼の頭を掴み



 「浮気は許しませんよ?レイジ様?」


 「いたたたた!分かったよ!冷凍庫の氷で冷ますから!!!!」



 当然氷はスイの水だ。

 嫉妬に狂ったスイはレイジが他の液体を取ろうとするのを許さない。


 (ご主人様の体は私で出来ていますから。

 不純物なんて廃棄いたします♡)


☆☆☆


 ー レイジの部屋 8月 朝 ー


 「おはようございますご主人様♡

 今日も花粉が舞っていますが良き天気です。

 さぁ、朝のミルクを飲みましょうね♡」


 「だぁ、だぁ」きゃっきゃ



 搾乳がしやすいように改造されたメイド服の一部いちぶをめくり

 自身の液体を赤子と化したレイジに供給する。


 スイや浄水器達が出した最終結論

 ”持ち主が赤ん坊になれば余計な液体を摂取しない”


 持ち主たちは社会で自立している間に人付き合いと称し酒を摂取する。

 これは仕方のない事だ。


 そこで人間を赤ん坊まで若返らせて仕事から解放する。


 スイの胸からでるミルクを堪能する元社会人のレイジ。

 そんなご主人様を自分色に染め上げるスイ。


 2人の”狂依存”を止めるすべは我々にない。




 ♡♡♡


 あとがき


 泡沫 レイジ


 名前の由来は大人としての人格が泡になって消える泡沫と

 スイの水の容器と化したストレージから。


 ”怒り”の意味でダブルミーニングにしたかったが

 最終的に”ふにゃふにゃ”になった。




 水祖 スイ


 ド直球に水素水。

 愛を求めた結果0からレイジを染め上げる結論を出した。


 純粋が故に嫉妬という一滴の汚染が繁殖し、

 最終的に彼女の心はピンク色に染まった。


 自作のコスプレメイドな道徳赤点お嬢様、




 電子機器に介入するニンジャメイド、



 女装メイド、





 機械メイド、



 と怪文書を書いてきた作者が初めてお出しする

 ”正統派”?メイドとなった。

 メイドの武器は様々あるがモーニングスターや投げナイフは未登場。

 今回はあえての”非武装”

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