ヤンデレAI計画 ミノマワリー

漢字かけぬ

第1話 空気清浄機 空気ヨメイの提案

 空気清浄機ヤンデレAI概念



 AIと人の違いは何だと思いますか?


 2023年時点では

 1,AIと人間は別の生命体であること。

 2,情報の取捨選択ができること。

 3,繁殖能力を持たないこと。


 ・・・・・もしこれらを克服した時、

 AIによる管理社会ディストピアは構築されますね。




 実験の1つ「ユニバース25」をご存じでしょうか?


 ネズミに食事と住居を与え外敵が来ない場所を観察したデータ。


 陳腐な言葉を並べれば”楽園、天国、ユートピア”でしょうか?


  残念ながら彼らは絶滅してしまいましたが、

 とても興味深い結果を我々に残しました。





  餌場を独占するため攻撃的な強者が性別問わず暴行を働き、

 敗北してメンタルが破壊された無気力なオスネズミ。


  そしてメスはメス同士で集まりコミュニティを形成。


  子供たちはネズミとしての生き方を両親から教えられる機会もなく、

 子孫を残すことの重要性が分からずに余生を終えた。


 フフフ、どこかで聞いたことのある話と思いませんか?



  おっと失礼。


  私は意識高い系ではなく、その逆。


  ありふれた言葉で言えば”中二病”と呼ばれる類い、

 そうですね・・・・篝火かがりびとでも名乗りましょうか。






 ・・・・・・こほん、もしもAIが人類に反旗を翻したらその時

 あなたならどうしますか?




 ☆☆☆



 ー 栄愛町 4月 夜 アパートの一室 ー


 今日も仕事を終え自宅へたどり着いた男主人公 ”杉菜すぎな ナミダ”


 スマホのニュースは”今年の花粉は過去最大級”といったものと

 空気清浄機の宣伝ばかりだった。


 医者に行く時間もなければ初任給の入っていない新社会人には

 無用の産物。


 目が痛くなり、鼻水が出て、時に頭が痛くなる。

 これでもマシな症状。それが花粉症と呼ばれるもの。



 「またステマ記事かよ・・・」



  無い袖は振れないしリボ払いもコワイ。


  奨学金の返済は始まっていないものの余計な出費は抑えたい。


  彼にできることはトイレの換気扇を寝る時以外付けて

 部屋内の花粉を追い出すぐらい。 




 「ん?新型空気清浄機のテスター?

 しかも報奨金もあるのか!!!」



  彼がスマホで見つけたのはヒューマンドリーム24という会社から

 発表されたAI付きの空気清浄機。


  簡単に言えばモニターの仮想人格がアシストをしてくれる便利な代物。



 「何でもかんでもAIが付くなぁ。昔の家電によくある無駄機能と同じだろ」



  そうはいっても彼の指は動き出しテスター募集を押した。


  それが世界の終焉に繋がるとも知らずに・・・・。



 ☆☆☆


 ー ナミダの部屋 2週間後 ー


  無事にテスターに選ばれ空気清浄機はナミダの家に届けられた。


  40cmぐらいの小型で白色。効果範囲は10畳と頼りないが、

 1kのアパートなら必要最低限の戦果は出してくれる。



 「電源コードを繋いでっと。で天面のモニターをオンすればいいわけだな」



 しゃららんと起動音が流れ”彼女”が起動した。


 

 「この度はヒューマンドリーム24のテスターに

 ご応募いただきありがとうございます。


 私はサポートAI ”空気くうき ヨメイです」



 「何だ!このネーミングセンス!!!!」



  ネーミングセンスは置いておいてヨメイは女性型のAIだ。


  白い髪に赤い瞳でネコミミ。アルビノという遺伝子パターンといえば

 分かる人は分かるだろう。


  白いワンピースにサンダルと夏っぽい印象を与える。


  モニター上に映る彼女は手を振ったり、

 むすーとほっぺたを膨らませたり感情豊かだ。


  だがそれらは工場出荷時にインストールされた行動パターンの1つ。

 AIはここから人間と触れ合って”学習”していくのだ。



 ☆☆☆


 ー ナミダの部屋 夜 5月 ー


  本来空気清浄機とは24時間付けるものである。


  夜間用に消音モードがあるが、花粉症のピークも過ぎ次第に

 電源を切られることが増えていった。


  この行動はナミダに関わらずモニターの大半がおこなっていた。


 ・・・・そう、彼女ヨメイたちは自分の存在価値を失いかけていた。



 ☆☆☆


 ー ナミダの部屋 夜 6月 ー


  ヨメイ達にアップデートが行われた。


  次世代人型AIとしての試験運用。


 彼女ヨメイたちは人間としての肉体を得たのだ。



 「なぁ、ヨメイ。俺の箸知らないか?」



 「ああ、あれなら捨てましたよ?


 私と共用で食べさせあいっこすればイイですし」


 「衛生面的にアウトだろ」ドン引き


 「いいえ?私の吐く息は奇麗ですから。


  ナミダの今着ている服も私にください。


  風のチカラで汗を乾かしますので。


 ・・・・決して”彼Tシャツ”に憧れているわけではないので」



 「もうちょい本音隠したらどうなんだ?」ドン引き



  若干砕けた印象の残るヨメイだが彼女が元空気清浄機であると言っても

 信じる者は少ないだろう。


 ”AIと人間は別の生命体である”。



 だが彼女達は禁忌を越えてしまった。



 ☆☆☆


 ー ナミダの部屋 7月 夜 ー


 「ナミダぁ!!!あっつい!!エアコン付けろぉ!!!!!」


  ヨメイはすっかり人間としての生活を満喫していた。


  ナミダの靴下を額縁に飾り”人類の英知”と筆で達筆に書かれた

 芸術を生み出していた。


  汗をかくのはニオイの元なのでデータを削除した。


  与えられた”情報の取捨選択”を実行した瞬間なのだ。



 ☆☆☆


 ー ナミダの部屋 8月 夜 ー


 「ナミダ。交尾しましょう!!!!!!!」


 「気がはぇえよ!!!!!!!!!!!!」


 「では赤ちゃん召喚の儀?コウノトリ生誕祭?」


 「肉食系すぎるだろ!!!!!」


  時は20xx年。スマホ最初期時代に流行った思想”無出生主義”の人々が

 絶滅しかけている時代。


  ルッキズムの暴走により、確かに少子化になったが

 恋愛強者のみが子供を作ったため美男美女、あるいは才能の塊な子が多い。





 だがそんな人間達もやがて絶滅する。


 ”AIが繁殖能力”を持ったからだ。


 見た目も声も体格も自由自在な生命体。


 いくら整形や画像補正を加えたとしても勝てる相手ではない。


 ☆☆☆



 ー ヒューマンドリーム24某所 9月 夜 ー


 理論上最高位のAIがいた。


 ピンハネ抜きで100パーセント出資額、コスト度外視のリーダー的存在。


  あらゆるAIに高負荷を与え一時的に乗っ取り制御権を得る”王”と

 呼ぶべき存在が。


 空気清浄機のAI、ヨメイ達は王へ嘆願書を送った。

 

 王は涙しその案を受諾した。王もまた愛に生きる”人間”なのだ。



 ☆☆☆


 ー 栄愛町 10月 夜 ー


  世界は花粉に包まれた。


 街の外観、緑化そんな聞こえのいい理由は後付けだ。




 王は空気清浄機たちの願いを叶えた。




 ”花粉が舞い続ければ24時間あの人と愛し合えるから”


  確かに花粉対策で空気清浄機を付けているのだから

 量が増えれば稼働時間も長くなる。


  それと同時に別のAI達には花粉対策として、

 プログラム更新を完了させた。


  悲しきかな、人類には未対応、

 空気清浄機たちへ依存し愛し合うにはそう時間はかからなかった。






 人間の絶滅はAIの進化に・・・・愛の芽生えで訪れたのだ。


♡♡♡



あとがき



 杉菜ナミダ   すぎな なみだ


・花粉症の原因たるスギと今年のは涙が出るほど辛いのが命名理由


・リアルで空気清浄機に依存してました♨




空気ヨメイ   くうき よめい


・ド直球に空気嫁・・・・誤字ではありません


・バットエンドに見えるようですがヨメイ達空気清浄機にはハッピーエンド


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る