ある豚の話。

西奈 りゆ

第1話

おれは「ブタ」だ。ぴんくいろで、つやがある。

さんかくのみみだってじまんだ。


しかもおれは、「ボクジョウイチ」の、じまんのからだで、ちからもち!


・・・の、はずだった。


いつのまにか、おれは「ベーコン」っていう、なんだかふがふがするなまえでよばれていた。


しかも、からだがほんのすこししかない!

まったくわけがわからないまま、「ヨイショッ」というおとはきこえた……。


そして、つぎにきがついたら「ソテー」になっていた。なんだよ、「ソテー」って。

いや、もうよそう。


・・・つれていかれたときから、そんなきがしたんだよ。

ああ、これがそうか・・・ってな。


そこからさきのことは、かんべんしてくれ。

いまさら、おもいだしたくもない。


それで、だ。


おれは「ベーコン」とよばれて、たべたことがないへんなくさといっしょにされて、

「オサラ」のうえにいた。さっきまでな。


いま? みてのとおりだよ。じめんのうえだよ。


おれをくおうとしたにんげんのこどもが、おとしたんだ。

そしてみつけてもらえないまま、うごけないからおれはじめんのうえにいる。


「ごちそうさまでした!」

こどもたちのこえがする。「ソージノジカン」がはじまるらしい。


きいたことがある。

おれたちはいつかにんげんにたべられて、たべられなかったら「すてられる」ってな。おれはものしりだから、なんとなくわかった。おれもそうなんだろう。


いきのひとつでもはきたくなる。はくものがないが。


「あ」


うえをみると、こどもがいた。おれをおとしたのとは、ちがうやつだ。


さきにいうと、けっきょくおれは、「すてられた」。


だが、そいつはおれにだろう、「ごめんね」っていった。


しょうじき、にんげんのことはわからん。

だが、おれでもそいつが、こどもにしても、つよいやつではないことくらいはわかった。


そいつはそっと、おれをあおいいれものにいれた。

どうも、「ゴミバコ」というらしい。


おれには、にんげんのことはわからない。

だから、「ごめんね」がなんなのかもしらない。


だがな。なんたって、おれは「ボクジョウイチ」だ。

あたまもいいのさ。


おまえよわそうだから、

おぼえといてやるよ。


ブタのちから、なめるなよ。


・・・・・・へっ。すこしはましなきぶんだ。


こうして、とあるボクジョウイチの豚はまた、深い眠りについた。


追記

ほうれん草のソテーは、ハムではなくベーコンが主流でした。(なので、物語ごと一部修正しました💦)




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ある豚の話。 西奈 りゆ @mizukase_riyu

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