第2話
僕は、朝起きるとパジャマから制服に着替えて朝ごはんと昼食ようにお弁当を作り洗濯物を干す。そうすると大体トウカ姉が部屋に入ってきて席についてコーヒーを飲みながら待っている。
「アルト。ご飯。」
気の抜けた声でご飯をねだる声がする。
「トウカ姉。今用意するから着替えな。」
「はーい。」
また、僕の部屋に入って行った。もう突っ込むのはやめよう。
着替えてきたので朝食を食べ、準備をし家を出た。
「じゃあトウカ姉。行ってくる。ってあれ?どこか行くの?」
「うん。今日は、研究室に行く。」
どうやら、大学の研究室に行くようだ。なんというか、朝から行くのはありえない。
「別人?」
「バカ。」
普通に叩かれた。ちょっと痛い。
「今日は、普通に研究があるだけだよ。」
トウカ姉は大学に僕は高校に登校した。ここは高校と大学が一緒の敷地にある一貫校だ。
「今日は、美人なお姉さんと登校していたね。アルトくん。」
こいつはなんだかんだと腐れ縁があるエイキだ。
「たまたまだよ。今日は研究があるらしいんだと。」
「そうか。」
案外すっぱりと切ってきた。
「それより、今日の授業なんだけど」
僕たちはこうして普通の日常を送っていく。
淡々と授業が進み夕方になった。バラバラに散らばり部活動に励む者もいれば家に帰るものいるだろう。
「アルト。今日はどうする?」
「とりあえず、部室に行くよ。」
「そうか?じゃあ一緒に行くよ。そうだ!ミズキ!部室行くけど、行く?」
「ちょっと待ってて行く!」
「じゃあ外で待ってる。」
僕たちは校舎の一階にあるカフェテリアで待つことにした。
「お待たせ!」
彼女はミズキ。その隣にいるのはソラだ。どうやら、彼女もくるみたいだ。
「じゃあ行こう!」
部室は、大学がある棟の一ヶ所にある。あまり大きくない部屋だ。電気が付いているので先客がいるみたいだ。
「失礼します。」
「ん?来たか。」
「あれ?ナツハさん。今日はどうしたんですか?」
彼女はナツハさん。大学生で、ミズキの姉だ。
「暇だからきてみたんだが、ついでだから少し観ていたのさ。」
それは、先月観測して得たデータだった。忘れていた。ここは、宇宙観測同好会だ。
そして、ここは観測データ保管として使っている部室だ。
「そうだ。エイキくん。こう言う感じのやつが欲しいんだけど出来るかい?」
「そうですね。明日には試作ができると思うんですが、それでよければ。」
「構わないよ。じゃ頼むよ。」
ナツハさんは、エイキにまたおねだりしたようだ。エイキはプログラミングの天才と言っていい。それもそうだ。彼は、天才プログラマーとして称される人間だ。
最近何かしらのプログラムを発明して警察に感謝されたとか。
宿題をやりつつ、たわいのない話をしているうちに時間は過ぎて行った。
「アルトくんここ?」
勢い良くドアを開けたのは白衣を纏ったトウカ姉さんだった。
「一体どうしたんだ?」
開口一番最初に口を開いたのはナツハさんだった。
「どうもこうもないわ。アルトくんを借りていくわ!」
僕の腕を掴み連れ去ろうとしている。
「おい!アルト!」
「ごめん!かばんをお願い!」
トウカ姉さんに連れ去られるままに付いていった。
目的地はトウカ姉さんの研究室だった。
研究室は大学の方の敷地にある。真っ白な内装に乱雑に置かれている装置と椅子を中心に散らばっている論文、そしてガラス張りの棚に飾られている賞の数々。
これが女性の部屋と言っても誰が想像できるだろうか。
この時僕はあることに気づいた。
「トウカ姉さん。もしかして、行き詰まった?」
「うぐっ!なぜ、それを。」
「これだよ。」
僕は、そこら中に散らばっている物を拾い上げた。
それは、向日葵やマツボックリはたまた銀河系の写真が床に散乱していた。
それはトウカ姉さんの悪い癖でもある。彼女は、考えが煮詰まるとフィボナッチ数列の物を見つけては部屋に持ち込んでくる。どこでこれだけのものを見つけてくるのやら。それを彼女に聞いてみたことがあったのだが、その時は『視界に入ったから』だと言っていた。
「そうなの。助けて!アルトくん!」
まぁ、毎回そうなのだ。と言っても毎回僕もわかるものでもない。
「それで、これなの!」
こうして、僕たちは警備員さんに早く家に帰るように言われるまで研究室に篭っていた。
翌日、学校でかばんをソラから受け取った。正直、ソラで助かった。他の2人だと返ってくるとは思わない。エイキの場合だとどこに置いたか忘れてくるし、ミズキの場合は誰かに取られる可能性がある。ナツハさんの場合は、週刊誌にすっぱ抜かられる可能性が出てきて正直考えたくはない。
「アルト!」
エイキが朝一番から話かけてきた。
「それで、どうだったんだ?」
「どうとは?」
「どうせ、トウカさんが煮詰まったとかじゃないのか?」
察しがいいな。
「そうなんだよ。今回は難敵かと思っていたんだが、家に帰ってから分かった。ただの計算ミスだったんだ。」
「そうか。なら今日の放課後空いているな?」
「今の所は、大丈夫だが?」
エイキにしては珍しい。何かあったのだろうか?
「おう!ちょっと手伝ってくれ!」
友人の頼みだし、断れないな。
二つ返事で応えた。
「ありがとう!親友!」
僕は、この時断れば良かったと後悔することになるとはつゆ知らず了承してしまった。
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