第5話
僕は、この状況を作るのに1ヶ月かかってしまった。僕がお願いしたメンバーには結構無理をさせた印象だ。
「これで、最後だね。」
エイキは大きい段ボールを置きテキパキと作業を終えて部屋は完成した。
「アキホさん。ありがとうございます。」
僕は、住んでいるマンションの大家さんであるアキホさんにお礼を言った。
「いいのよ。分かっていると思うけど。」
「はい。今度、お礼します。」
それだけ、言うと部屋を出て行った。アキホさんは、普段はこのマンションの一階にある弁護士事務所を開いている弁護士だ。なので、普段は忙しいので代わりの人が対応するのだが、今日は予定が空いて大丈夫だったのだろう。
「アルトくん。私は、何をされるのかな?」
かなり不安のようだ。
僕とナツハさんは不気味な笑い声をあげていた。その中でもエイキとソラは黙々と作業をしていたのでより悪目立ちしていた。
「さあ。ここに座って。」
促すままにミズキは椅子に座り、その目の前にあるモニターを見てその映像に感動を覚えている。
それもそのはず、彼女自身がモニターの中にいるんだから。
「これは一体どう言うこと?」
ここに来て、エイキは待ってましたと言わんばかりに語り始めた。
「これはね。AIなんだ。それも、ミズキのこの1ヶ月間とライブの時の行動を学習させたほぼミズキの写鏡と言ったところだね。」
正直これを相談した時、『やってみる』って言って出来た時の驚きは忘れられない。
しかしながら、それだけではこの部屋の説明にならない。
「これを作って貰ったのは、君にwetuberになって見たら面白いと思ってね。今でもwenstagram をやっているでしょ。それの延長線上でやってみてはどうかな?」
もしいい返事が聞けなかったとしてもこの隣の部屋はレコーディング室として作っているので歌の練習に使える。更にそのまま、編集出来るので便利だ。
「私も最初は不安だったわ。でもね、ミズキには自分のやりたい事をやって欲しいの。自分で自分を売り込む事は出来るのよ!貴方が1番輝ける場所で輝いて欲しい!」
ナツハさんも薄々気付いていたみたいだ。
今日のところは保留にして明日答えを聞くことにしてここで解散となった。
帰るエイキを引き留め少し会話をしつつ今回の件を労った。
「すまない。かなり急な事であまりお礼が出来ていなくて。」
「分かっているよ。それに僕にしか出来なそうなのも分かっているからね。僕のことを知っている君にしか出来ない突拍子のないことだよ。」
「それは褒めているのか?」
「褒めているよ。僕にはミズキのことを救う手立ては思い付かないことも含めて今回の成功を褒めているんだよ!」
「ありがとう!」
素直にそして短く最大限の感謝を込めて言葉を返した。
「いや、待って」
僕は1つの疑問が出てきた。
「まだ成功とはならないでしょ。ミズキも同意してないし。」
エイキは表情を笑顔にして自信満々に応えた。
「ミズキは絶対にいい返事するよ。最近暗い表情が多かったから相当悩んでいたんだろうね。そんな時に救いになるのかもしれない1本の細い蜘蛛の糸が目の前にあるんだ。絶対に飛びつくよ!更にそれを垂らしているのがアルト。君なのだから尚更だ。」
近くのコンビニでエイキと別れることになった。ただ、別れ際に放った1言が気になった。
「今度会うときは元気にしていることを祈っているよ。Good luck!」
僕は家に着いた時にそれが意味する事が理解出来た。
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