第6話

相変わらずエイキが最後に言った言葉が分からなかった。

だだ運命というものはある程度存在するのだと確信するのであろう。

こんなことが起きれば。


僕は、あの時から1週間ずっとトウカ姉さんに腕組みでくっつかれている。ご飯の時も寝る時もはたまたお風呂の時もだ。最初にされた時は、驚きのあまり声を荒げた。流石に既に慣れた。


これは、どうも1ヶ月ほど構っていなかったことによる反動のようだ。


それでも、学校の授業の時だけは解放されて休み時間になるとどこからともなく現れてくっついてくる。最初は欝陶しいと感じていたが1週間も経つと逆に慣れてくる。

しかし、疲れは溜まるわけで。


「ソラ。邪魔するよ。」


「アルト。どうしたの?」


ここは、学校が作ったソラのための部屋だ。と言うよりソラの親の圧力だ。彼女の親は学校に援助しているため学校側が配慮という名目で景色が一番いい部屋を用意した。ほとんどが彼女のギャラリーになっている。


「少し休ませてくれ。」


「分かった。」


僕は、部屋にあるソファに寝転がりうたた寝を始めた。


彼女は、それでも黙々とキャンバスに向かって絵を描いている。

夕日に映るその姿は彼女の容姿も相まって天使を彷彿させる。


「起きたの?」


僕が目を覚ましたことに気づいた彼女はこちらに椅子ごとこちらに体を向けた。


「どのくらい寝てた?」


「1時間くらいかな。」


それならそろそろ帰る時間になる。

僕は、鞄を手に取り扉を開けた。


「またね。」


「うん。また明日。」


僕には、少し違和感を感じていた。今日のソラはいつもと違ったような気がした。

たまには体調が悪い時もあるんだろう。僕はそう思うようにして帰宅した。


自宅の扉を開けた途端に僕の意識は暗転した。


流石にやりすぎな感じがあるが、これは僕の失態だ。耐えよう。


次に目を覚ましたのは完全に日が沈み夜景が綺麗に光、街ゆく人々を美しく照らす。


「起きた?」


「うん。起きたよ。」


「ご飯を作ったから食べる?」


僕は、驚いた。トウカ姉さんは普段料理などしないはずなのに。


「あら。私は、一人暮らしの時はしていたのよ。」


僕は、その言葉を聞いてますます不安になる。

とりあえず、ベットから起き上がり脱がされた服を着直して部屋を出て席についた。


姉さんはテキパキとご飯とおかずを配り終えた。


「トウカ姉さん。こんなに出来るならいらないじゃん。」


「そうでも無いのよ。」


食べてみてと言うジェスチャーをして、食事を促した。


「うぐぅ。」


ひどい味だ。なんというか。煮物が甘い。確かに甘くするところもあるが、これはそういうわけではない。とにかく甘い。


「姉さん。これ食べられるの?」


「難しいわ。」


なぜ、食べさせようと思ったのか。


「なぜか甘くなるのよね。」


「姉さん。どこかで食べよう。今日は土曜日だから学校ないしね。」


僕たちは、食べ物には申し訳ないが、捨てることにして近くのファミレスでモーニングを楽しむことにした。


朝の涼しい風にさらされながら外の新鮮な空気を吸う。


「姉さん。もういいの?」


僕は、今日くっついて来ないことを疑問に思って姉さんに問いた。


「もういいの。スッキリしたからもういいの」


姉さんの笑顔が清々しく見えこの青空は彼女の為にあるように感じる。

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