第7話

僕はこれほどまでに後悔したことはない。


「なぁ、聞いたか?」


学校に着いた早々にエイキが話しかけてきた。


「何のことだ?」


何も知らないので、聞き返した。


「ソラの作品が落ちたらしい。」


僕と、エイキの間に束の間の静寂が訪れた。


今日1日は色を失った生活を送った。

授業が終わり放課後になるなり、すぐにソラに会い向かった。


僕は、まずいつものソラの部屋に向かった。しかしながら、そこにはいなかった。


探しに行こうとした時に後ろから声がした。


「入らないの?」


探している本人だ。


「入っていいのか?」


「いつも入って来るのだから今更よ。」


そう言うと普段どおりの足取りで部屋に入って行った。


僕は、彼女の正面に見えるように椅子を用意して座った。


「落ちたという事は本当?」


「正確には違うけど、概ね本当よ。」


彼女は、さも問題がないかのように振る舞った。


「最優秀賞が取れなかっただけ。」


「ソラにしては珍しいじゃないか。」


そう。彼女は、コンクールの度に賞を取り去るので今回のようなことは少し珍しかった。


「大丈夫次は獲るから。」


ソラは力強く応えた。


大丈夫だと思い僕はそれ以上追求はしなかった。


やはりここで追求すべきだった。


「また逃した?今度は入賞すらできなかった。」


さらに悪化した模様だ。


僕は、休日に会う約束をソラとした。もちろんと言うべきかそこにトウカ姉さんもいる。

こう言う時は気晴らしにどこかに行くのがいい。と言うことで遊園地に来たのですが、めちゃくちゃ大雨降ってきました。

途中まではいい天気だったが、お昼過ぎから大雨が降ってきた。


「今、検索したら夕方まで止まないみたい。」


「そっか、ここで解散というのもなんかスッキリしないし。」


「なら、ここには水族館があるの行ってみない?」


トウカ姉さんは指を示して提案してきた。


その水族館は辺り一面青の世界だった。その世界に迷い込んだ人という設定のようだ。

こういうのは新しい発見や発想が自然と生まれる助けになる。

なのでソラは公園の散歩や図書館にはよく行っていたようだ。


「ソラどう?」


「すごく綺麗。知らない世界だわ。」


彼女は、一番大きい水槽に着くとタブレットを取り出してスケッチをし始めた。

一度こうなると終わるまでずっと書き続ける。


「トウカ姉さん。一緒に周る?」


僕は、流石にずっといるわけにはいかないのでトウカ姉さんと周ることにした。


夕方まで歩き回り、大きい水槽まで戻るとまだ描いているソラと合流した。


「いいの描けた?」


「うん。満足。」


彼女の描いた作品はたしかに彼女の才能の輝きを放っていた。

それだけ彼女の世界は広がったのだろう。


またトウカ姉さんに助けられた。少し不甲斐なく思う。


姉さんは彼女が悩んでいることに足りないものにいつ気づいたのだろうか。天才にしか気づかない何かがあるのか。


「そうでもないのよ。」


僕は、振り返って見た姉さんは、「どうしたの?」と言いたげな顔をしていた。


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