僕は、彼女たちの頭の中を見たい
やーしん
第1話
僕の住んでいる部屋の隣に住んでいる人の異常性を除けばいたって普通の男子高校生のはずだ。
学力も中の上、運動も嫌いではない。普通の人のはずだ。
学校からの下校途中にあるスーパーに寄って食材を食うつもりが作るのがめんどくさいのでお惣菜を買い家に冷凍している白米を解凍して温めて今日の夕食にするつもりだった。マンションの部屋に入るまでは。
「ここで何をやっているんですか?」
部屋に入るとそこには1人の女性がいた。真っ直ぐに伸びた銀色の髪とその細い腰のライン、豊満な胸と透き通るような青い目は人形と見間違えるくらい綺麗な人だ。彼女の名前は筧冬華さんだ。僕の隣の部屋に住んでいる住人だ。
「そろそろ帰ってくる頃だと気づいたから、待っていたわ。そして、お腹が空いたわ。」
本当に非常識な人だ。連絡先を知っているんだから連絡すれば良いのに部屋に勝手に入ってそこで待っているなんて。
「さっき買ってきたお惣菜と冷凍の白米しかないが、それでいい?」
「それなら、あそこに行きましょ。着替えて。」
どうやら外食に決まったようだ。彼女の鶴の一声でだいたい決まる。
制服から私服に着替えてリビングで彼女が着替えて戻ってくるのを待っていた。
一見問題がないように思えるが、非常に大きな問題がある。
彼女が入っていた先は僕の部屋があるところだ。なぜ、着替えるのに僕の部屋に行くのか謎が謎を呼ぶ。着替えを終え出てきた彼女に問いかけた。
「とうか姉さん。なぜ僕の部屋に入って行ったんですか?」
「ん?便利だから服を置いておいたの。」
焦る様子がなく淡々と受け答えしているのでこちらが間違っているのではないかと思ってしまう。
部屋着から外行きの服に着替えたとうか姉さんと僕は外食するために駅に向かった。最寄駅の近くは駅ビルにが連なり、帰宅ラッシュで人がごった返していた。
目的地はこの駅ビルにあるようだ。
「いらっしゃいませ。」
あまり大きいお店ではないこじんまりとしたお店ではあったが、落ち着いた雰囲気で胃心地が良さそうなお店であった。
奥には店主と思われる女性がいた。
「来たよ。カンナ。」
とうか姉さんとは知り合いのようだ。
「いらっしゃいませ。とうかさん。あれ?今回はお連れ様もいるのね。」
「今日は、アルトと一緒だよ。アルトこっちはここの店主のカンナだ。」
「この子がアルト君ね。」
カンナさんは温かい目でこちらを見てくる。品定めされている気分だ。一体僕がいないところで何を話していることやら。
カンナさんに席を案内され席に着きメニュー表を見た。普通の喫茶店を彷彿させるメニューだった。メニューにはコーヒーがメインのように映し出されているがカウンターの後ろには紅茶の缶が並んでいる。
「どっちなの?」
「それはね。カンナさんがコーヒーが好きで旦那さんが紅茶が好きでね。」
夫婦間の問題のようだ。とうか姉さん曰くどちらも美味しいそうだ。僕は紅茶をとうか姉さんはコーヒーを頼み、それぞれグラタンとエビカツサンドを注文した。
温かい食事を堪能した。紅茶の香りが高く飲みやすい温度で出された。とうか姉さんのコーヒーも口当たりが良く飲みやすかった。
食事を済ませ、カンナさんにお礼をしてお店を出た。
さっきより人がまばらになり始め、完全に日が落ちビルの光が夜景を作り始めた。
「ご馳走様でした。」
「美味しかった?」
ありきたりな返答なのかもしれないが、美味しいという表現が一番近い。
「どこか寄って行きませんか?」
「そうだね。では、いつものところに行こうか。」
彼女はいつものところに行きたいみたいだ。
その場所は、駅から徒歩15分のところにある小高い丘の上にあるところだ。
「ここはいつも静かだね。」
この丘には天文台がありいつも静かだ。程よく暗く星空を観測するにはもってこいの場所だ。
「とうか姉さんは何を見ているの?」
彼女は僕に微笑み夜空を指差した。僕は、彼女が指差した方向にあるものが何かは知らなかった。
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