第3話

放課後になると僕の席にまでエイキはやってきた。


「じゃ行こうか!」


僕は、こうしてまた誰かしらに拉致されていく。


学校がある最寄駅から3駅のところで降りた。ここは、オフィスビルが立ち並ぶ地域だ。何やら嫌な予感がするのは気のせいだろうか。


「着いたよ。ここ!」


明らかに大企業が入っているような高層ビルをエイキは指差していた。

そろそろ胃が痛くなっていた。

自動ドアを抜け、正面にある受付でその企業と約束している旨を伝えると受付の人が電話をかけて確認を取った。確認が取れるとそのオフィスがある階に案内された。エイキと僕はエレベーターに乗り指定の階のボタンを押しその階で降りた。


「エイキ様と、アルト様ですね。こちらへどうぞ。」


エレベーターを降りた瞬間に話しかけられた。それぞれ自己紹介を済ませ、案内されることになった。彼女の名前はヒメコさんと言うらしい。彼女の案内で一室に通された。


「やぁ。久しぶりだね。アルトくん。エイキくん。どうぞ座って。」


僕は、驚いた。彼女は、アカネ。エイキと同様にして天才プログラマーなのだが、彼女はハッカーやクラッカーに近い。それも相まって、警察から目をつけられサイバー犯罪の手伝いをさせられている。


「エイキはこっちで、アルトはそっちね。」


いつものように冷たくあしらわれる。それもそのはず、彼女はエイキの婚約者なのだから。

そして僕たちは、席についた。


「それで、僕はなぜここに呼ばれたんだ?」


僕は、ここにいる全員に質問した。


「それは、私から話そう。」


そう。ここにはもう1人会議室の奥に座っていた。


「こちらは、この企業の社長をしております、アイカ様です。以後お見知り置きを。」


どうやら、このすごく影が薄い女性が僕を読んだ張本人のようだ。


「僕を呼び出した、理由は?」


僕は、彼女に呼び出した理由を再度聞き直した。


「それは、私から説明するわ。」


アカネがそう切り出した。


「今回、私たちはとあるものを作ったの。」


そう言ってPCを起動させプロジェクターで写し始めた。

そこに映っていたものは、正直に言って読めない多分プログラムの一部であろうものだった。


「これなのよね。」


だから、天才という者は。彼女は悪気がなく説明している。

エイキはずっと頷いているので理解している。そして、アイカ様とヒメコさんはというと。

これは、彼女たちも何を言っているのか理解できていないのだろう。そんな顔をしている。


「アカネ。悪いがもう少しわかりやすくお願いしたい。」


「そうね。そうしてほしいわ。」


アイカ様による苦言も吐いた。


「そうね。いつもエイキと話していたから忘れていたわ。」


そして、あるものを見せつつ、少し息を整え今度は違う画面を見せてきた。


「これを見て。」


そこに映っていたのは、1人の女の子だった。


「アカネ。とうとう。」


僕は、ゴミを見るような目で見た。


「流石に冗談じゃないわ。彼女は、今育成中のAI。彼女を人間の友人とし育てたいのよ。」


「済まない。思考が追いつかない。」


「そこは、私が説明するわ。」


アイカ様が、説明し出した。


「彼女は、今この会社が運営しているゲームの監視を行うようにプログラムする予定だったのだけど、エイキくんから面白い話を持ってきたのよ。それは、完全自立型個人用AIの開発だったの。元は、あなたアルトくんの考えって聞いてね。ものは試しにと開発してみたの。そこで、一つ問題があってね。」


「どんな問題ですか?」


「簡単にいうと、私たちはエンジニアとしての目線でしか計れないわ。そして、一般という枠組みから離れている存在だわ。なので、どうせなら発案者でもあるあなたに育成を任せてみようと思ってね。当然、私たちの思考も勉強させるけどね。」


どうやら相当めんどくさいものに巻き込まれたようだ。


「私は、この会社の秘密を喋ったわ。こんなの、バレたら社長いや、情報漏洩の罪でどうなることやら。」


どうやら、すでに断れないみたいだ。


「わかりました。お受けしますが、私は普通というには少しずれているような気がしますが。」


「それは問題ないわ。それは、口実だもの。」


この人は。


僕は、アカネからそのAIを受け取りスマホに取り込み生活することになった。

そして、そのまま帰宅することになった。

アイカさん。彼女にそう呼ぶように言われた。彼女に夕食に誘われたが、流石に高校生がよる遅くに歩いていると補導対象なので丁重にお断りした。ほとんどの場合は大丈夫だが。これも口実ということだ。


「にしても、エイキ。よくそんなの、覚えていたな。」


「AIのことかい。それは、覚えているよ。君が、初めて僕が作ったプログラムをあんなにキラキラした目で褒めてくれて、そして一番最初に僕にした注文だよ。あれが僕をつき動かしたんだ。僕に取っては大事なことだよ。」


本当に、こいつは。


「だから、最後の育成に関しては、君に任せたいんだ。君が、欲しがったものだからね。アルト。君に、最高のプレゼントをしたいんだ!」


全くもう。


「今度なんかお礼するよ。文句言うなよ。」


エイキ。君は最高の親友だ。


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