第16話 粽




「さて。これでようやく出発地点に立てたかのう」


 『胡月城』の鈴月の自室にて。

 勉強机の椅子に座って水晶玉で凛太郎たちの様子を見ていた鈴月は、勉強に戻ろうと書物へと伸ばした手を、けれど引っ込めては立ち上がると、厨房へと向かうのであった。











「凛太郎。鈴月様から差し入れが届きましたよ。干し海老、筍、蓬、もち米を竹の葉で包んで蒸した粽ですよ」

「え?やったー!!!俺、お菓子の粽もご飯の粽もどっちも好きなんだ!!!鈴月様!!!ありがとうございます!!!」


 陵牙と共に釣り竿とたも網を使って無事に雲魚を捕まえ終えた凛太郎は、雲の下に向かって両の手を大きく振り続けた。


「冷めない内にはよう食べい」


 眉根を寄せた鈴月は自分で作った粽を食べて、流石じゃ美味いと笑ったのであった。











(2023.5.5)



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冒険の書~幻の十二月の動物たちを探せ~ 藤泉都理 @fujitori

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