第3話
目覚めた。埋もれた。弾けた。
『グワングワン』
視界は揺れる。水面に立つ波のせいなのか。
『グゥー』
と大きな音を誘発させ続ける物のせいなのか。僕たちには分からなかった。
『ガヤガヤ』
辺りには、それまでとは違う、喧騒が響いた。
・・・・肉が生まれた。僕たちは、貪る様にそれを、調理せずに食べた。
一人が叫んだ。
『みんな、狂ってる。錯乱している。落ち着こう』
・・・・・肉が生まれた。
僕たちは、再度、貪った。
味は解らなかった。
・・・血の味と、涙の味以外。
僕以外、みんな、みんな、みんな、みんな、肉になった。
僕は、お腹が空いた。もう、肉はない。
荒波に支配された此処は、もはや全ての命の灯火が消えてしまった。
また、覚めてしまった。
今度は、森だ。先の見えない、。暗くて、重くて、冷たくて、寂しい濃霧に覆われている。
手に持っているコンパスは、回り続けて、使えない。
『ガサガサ』
辺りからは、物音が響いている。
『うワァアアァ!やめっ!たすけ!』
断末魔と、それを無情にも搔き消す
『グシャ』
という音が響いた。
肩から、力が抜けた。
視界の端には、鋭い鏃が見える。
鉈を振りかぶる
『ビュンビュン』
と音が近づいてくる。
あっ、終わった。
狂った。気狂いの笑顔をした少年が、辺りから飛び出した。
・・・僕の頭は、二つに分かれた。
片方は、犬畜生の餌に。
片方は、蛆の餌に。
身体は、深い深い、川の底。
燃える。
服が燃える。
辺りは、業火に包まれていた。
全てを消し去り、浄化する業火に。
僕の罪を数える様にゆっくりと燃えた。
皮膚が爛れ、骨が露呈し。指先が炭化し。足が焼け落ち。それでも、炎は冷酷に、優しく。全てを破壊しながら、そこに灰を生み出した。
その灰は、風に乗って、どこかに散っていった。
そして、灰は、生物に、植物に祝福を与えた。
おしまい。おしまい。
・・・また、目覚めた。目覚めた。目覚めた。目覚めた。目覚めた。目覚めた。目覚めた。目覚めた。
『グシャリ』
潰れて、弾けた。
『グサリ』
腹を、刺された。
『ガシャン』
僕は、頭の無い僕を見た。
『ブシャー』
腹は、血を噴き出した。
───────いつまでも続いた。潰れて、弾けて、噴き出して、飛んで、埋もれて、腹を空かせて、焼けて、燃えて、割れて、落ちて、吹き飛んで・・・・・これは、いつまで続くの?
夢幻地獄 橋立 @hasidate
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