第7話 オリジナル魔法

 エルド師匠が走り去ってからしばらくして、森からクランシーの悲鳴が聞こえてきた。ユウトは慌てて走り出し、エルドと合流した。


「師匠?! クランシーは!?」

「大丈夫だよ、気を失ってるだけ。ただ、彼が見つけたのはとてつもない魔力を持った魔獣だったんだ。今は私の攻撃で引っ込んでるけど、またやって来るだろうね」


「今のうちに逃げましょう、師匠!」

「うーん、どうかなあ。あの魔獣は私に餌を盗られたと思っちゃっただろうしねえ、クランシー君をどこまでも追いかけてきそうな気がするね」


「まずいじゃないですか!!」



 グルアアアアアアアア!!!!



 轟音とともに魔獣が近づいてくる気配を感じる。


 もう来たのかよ!


 ユウトはすぐに剣を抜き放ち、構えたが、ユウトでは到底敵わないことはわかっていた。


 エルド師匠は優しい口調で

「ユウトくん、今から見せる魔法が私のオリジナル魔法なんだ。ただ、これを使うには幽体の僕には負担が大きすぎてね」


「え?」

「一度しか見せられないからしっかり見ておくんだよ」


「え? 師匠?」


 エルド師匠の姿が光りはじめ、薄くぼんやりとした輪郭が見える。

 そしてその薄くなった状態でクルクル回り始めた。


 グルルル!!


 魔獣が姿を現し怒りの声を上げる。


 じゃあ行くよ、ユウトくん。

 これが私のオリジナルの魔法、『クロノス・ヴォイド』だ!


 エルドの体が光り輝くと同時に


 ボゴオオオオン!!!


 凄まじい衝撃音が鳴り響いたかと思うと、目の前にいたはずの魔獣がいなくなっていた。


 代わりに魔獣がいた場所にクレーターができており、その周りに木々が倒れている。


 ユウトは呆然としながらエルドの魔法の威力を感じていた。




「……ト君、ユウト君」

「あ! し、師匠?! どこ?! どこにいるんです?!」


「あー、もう姿は見えないかもねえ。もう時間がないだろうからしっかり聞いて。泣くのはその後だよ」


「あああ! はいっ! 泣きません」


「うん、えらいね。さすが私の弟子だね。ユウト君、さっき見た私のオリジナル魔法なんだけど、まだこれ完成じゃないんだよ。そこでお願いなんだけどね、君にはこの後旅に出てもらいたいんだよ」


「た、旅?! どういうこと?!」


「うん。君に『失われた知識』を探してもらいたいんだよ」

「失われた知識?」


「そう! 古代文明の遺跡や魔法禁断の書なんか探してみるといいかもしれないね」

「え? いや、なにそれ?」


「楽しそうでしょ? そう、この世界にはね、知らないことや楽しいことがたくさんあるんだ。せっかくこの世界に転移してきたんだ、しっかりと楽しんでもらいたいんだよ」


「師匠、それよりも、ぼく、オレは、オレは師匠と一緒に旅をしたいよ! 師匠! 師匠!!」

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