第8話 『失われた知識』を求めて

 それもきっと楽しいだろうね、とエルド師匠は笑った。

「だけどね、ユウト君。私がこの世界に留まり続けるのはやっぱり良くない事なんだよ」


「だけど! だけど今まで一緒にいてくれたじゃないか!」


「うん、そうだね。これは私のわがままだったんだよ。だけど、ちょうどいい機会だったね。今まで一年間、君はよく頑張った。最後に一つだけ、お土産を渡しておくね。クランシー君、こっちに」


 エルドさんの光の中にクランシーが吸い込まれていく。

 しばらくして光の中から出てきたクランシーは少し青く大きくなっていた。


(ユウト!)


「え? なに? ええ?! クランシーなの!?」


(うん! ボクだよ!)


「どうやらうまくいったみたいだね。この魔法はドラコロクエントと言ってね。これも私のオリジナル魔法でね、竜族と念話できるようになんだ。まあユウト君がクランシー君と心を通わせているからうまくいったんだけどね」


「師匠! すごいや!」


「あはは。やっと笑ってくれたね。あ、そうだ竜車のレイヴンとソラリスはこの森に残るように言ってあるから。君が必要になった時に連れて行ってかまわないからね。さて、そろそろ時間のようだ」


「師匠……」


「私はね、これっぽっちも後悔していないんだよ。私の魔法を引き継いでくれるユウト君に出会えたからね。いいかいユウト君、『失われた知識』を探し求めていけばきっと君に新しい道が開けるはずだ。君にはしっかりとこの世界を楽しんでほしいんだ、頼んだよ、ユウト君」


「はい、わかりました。師匠、本当にありがとうございました。オレ、師匠がくれた全てのものを大切にして、新しい道を開拓していきます!」

 と深く頭を下げた。


「うん、それでいい。私も君が大きくなる姿を見守っているよ」

 エルド師匠は微笑んで言った。


 その後、エルド師匠は光の中に消えていき、最後には完全に姿を消した。


 しばらく立ちすくんでいたが、クランシーの優しい声に導かれ、再び旅を続ける決意をした。


「ありがとう、クランシー」


 ユウトは心に決めた。

 師匠に聞いた『失われた知識』を探し求めるため、自分の未来を切り開くために、新しい旅を始めるのだ。


(うん! それじゃあ、ユウト! 旅の始まりだね!)


「うん! じゃあ出発しようか、クランシー!」





(プロローグ完)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

異世界で蒼竜と旅をすることになっちゃった?! UD @UdAsato

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ