第3話 状況
「さあ、ここに座って」
「はい、失礼します」
促されるまま僕は椅子に腰かける。
「お茶でも飲んで少し落ち着こうか」
「ありがとうございます」
出されたお茶を飲むと心が落ち着いてきた気がする。
「それで? 気がついたら森にいたの?」
「はい、そうなんです」
「うん、嘘は言ってないみたいだね」
え? なんでわかっちゃうの?
こわっ!
それから僕は自分の身に何が起きたのかを話した。
「なるほど、そういうことだったんだね。異世界、か。うーん、そうかあ、渡り人か。あ、めったにない事なんだけど、それでも百年に一度くらいは渡り人がいるって話なんだよ。僕も長く生きてたけど、出会ったのは初めてだけどね」
「いえ、それが全く。どうしたらいいのかわかりません」
「そっか。まあそうだよね。突然知らない世界に飛ばされたら途方に暮れるよね。とりあえず今日はこの馬車で過ごすとして、これからどうするか考えようか。まずはこの世界のことを私が知っていることを話すから聞いてくれるかな?」
僕は黙ってうなずいた。
まずこの世界のことだが大陸の名前はニニラカン大陸、そして今いる場所は魔境アヴァロンと呼ばれているらしい。
なんでも危険なモンスターがたくさん生息していて普通の人は近づくことすらできないということだった。
だから当然町なんかもない。
森を抜けるまでそんなモンスターに出くわさなかったもんな、運がよかったのか。
「そういえばその子はドラゴンだね。それも上位種のブルードラゴンじゃないか。こんな強いドラゴンを連れてるなんてすごいね」
「あ、はい。僕の相棒みたいな感じです」
「キュッ!!」
「ふむ。そのドラゴンとどうであったのか教えてくれるかな?」
「はい。実は」
オレはクランシーとの出会いから今までの出来事を全て話した。
「そうか。ユウト君が目覚めた時にそのクランシーっていうドラゴンの卵と剣が横にあって、卵からドラゴンが孵ったのか。うーん、ドラゴンの卵か。とても興味深いね」
「エルドさん。僕には何がここで普通なのかわからないんです。気がついたらこんなことになってるし。どうしたらいいか」
ダメだ、涙が。
どうなっちゃうんだろう、僕。
「ああ、ごめんよ。一度にたくさんのことを聞かされても混乱しちゃうね。とりあえず今日は何も心配せずにゆっくりお休み。あそこのベッドを使ってかまわないからね。あ、そうだ、その前に、食事にしよう! お腹がすいてると、いい事なんて何もないからね、少し待っててくれるかな?」
エルドさんはウインクを一つすると馬車の中のキッチンに向かった。
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