第4話 幽霊との契約

「はい、できたよ! ユウト君」

「ありがとうございます!」

 エルドさんが運んできた料理はとても美味しかった。


 パンに野菜や肉を挟んだだけの簡単なものだったけど空っぽのおなかに染み渡るようだ。


「じゃあ食べながらでいいから私の話を少しだけ聞いてくれるかい?」


「はい」


「じゃあ次は私の話をさせてもらうね。ユウト君、私を見て何か感じないかい?」


「んー? エルドさんはものすごく優しい?」


「あははは、言いにくいよね。君が感じている通り、私は食事を摂ることはできないし、もちろん、君に触れることもできない」


「どういうこと?」

「うん、私はね、幽霊なんだ」


「幽霊??」

「うん。私が死んでからもう二百年くらいになるかなあ。だからね、私は幽霊なの」


「エルドさん?」

「ああ、大丈夫だよ、呪ったり憑りついたりなんてことはないから」


「いや、うん。え? じゃあこのお料理は?」

「ああ、これは魔法で作ったんだよ。だから安心して食べていいからね。でね、ユウト君」


「はい」

「君にお願いがあってね。君にぜひ私の魔法を引き継いでもらいたいんだ」


「魔法を引き継ぐ?」

「そう。今から話すことは突拍子もないことかもしれないけれど信じて欲しい。実はね、僕は二百年前、賢者と呼ばれていたんだ」


「へぇ。って、え!?」

「ふふっ、驚いているね。まぁ無理もないけどね。でも本当なんだよ。それでね、私はとある理由からある呪いを受けてしまってね。それが解けない限り成仏することができないんだ」


「えっと、つまり、その呪いを解くために俺の力が必要ということですか?」


「話が早くて助かるよ。そういうことだね。君は魔法使いの才能があるみたいだし。きっと良い魔法使いになれると思うんだ。それにね、さっき話したように私が成仏するために君の力が必要なんだけど、それは同時に君を危険から守るという目的にもつながる。どうかな?」


「うーん」

 正直、何が何だか分からないというのが本音だった。


 突然現れた幽霊を名乗る謎の人物。

 そして彼の目的は自分の力を受け継いで欲しいという。


 でも、こんな非現実的な状況にも関わらず不思議と恐怖心は感じなかった。

 むしろエルドさんと一緒にいたら楽しそうだな、という気持ちの方が強かったのだ。


「あの、僕は何をすればいいんですか?」

「おっ! 受けてくれるかい?」


「はい! よろしくお願いします」

 こうして僕は不思議な幽霊と共に暮らすことになったのであった。


「ありがとう、ユウト君。では、クランシー君も大丈夫かな?」

「キュウ! キュウウウウ!」


「良かった。じゃ、契約は成立だ。これから私の知っている魔法、知識、剣技なんかも教えていくからね」


「はい、ありがとうございます!」

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