第5話 契約の儀式

「よし、それじゃあ」

 エルドさんは一本の短剣を僕の前に置いた。


「綺麗な短剣ですね」

「お、ユウト君、お目が高いね。この短剣は私と君の契約に使うための短剣だよ。まあ見ての通り、装飾は二百年前の帝国の職人が手掛けたものだから、美しさもさることながら、切れ味も素晴らしいんだ」


「あの、契約って?」

「あ、うん。君と私は今から契約を結ぶんだ。君がこの短剣を手にすると、私と共に修行をすることになる。期間は君が僕のオリジナル魔法を覚えるまで」


「オリジナル魔法?」

「そう、君にも私と同じ魔法を使えるようになってもらいたいんだ。ただし、それにはある条件があるんだけど」


「え? どんな条件ですか?」


「条件はひとつだけだ。それは、君が修行を続ける限り、僕の言うことに従うことだ。そして、私認めた時点で契約は終了する」


「はい、大丈夫です。魔法が使えるようになるなんて、夢のような話ですから」


「そうか、よかった。では、契約の儀式を始めよう」


 エルドさんは短剣を手に取り、自分の小指を傷つけた。そして、短剣を僕に渡し、僕にも同じように小指を傷つけるように指示した。

 僕は戸惑いながらも、指示に従って傷つけ、短剣を受け取った。


「よし、これで契約成立だ。これから君と私は共に修行を積み、魔法を極めていくことになる」

 エルドさんの言葉に、僕は胸が高鳴った。これから始まる修行が、自分を成長させ、魔法使いとしての夢を叶えるための第一歩になると思った。


「よし、じゃあさっそく始めようか」

「はい!」


「まずはユウト君の魔力量の測定からだね。渡り人は総じて魔力量が高いんだ。君からもすでに魔力反応がバンバン出てるからね。これを制御出来ないと一発で敵に見つかって総攻撃を受けちゃうね」


「ええ? そうなんですか? 僕がいた世界では魔法なんて使わないんで魔力自体がよくわからないです」


「そっかあ。じゃあ、まずは魔力検知をやって感覚を掴んでもらおうか。その方が速そうだ」

「はい、わかりました。どうすればいいですか?」


「まず、短剣を握りしめて、意識を集中させてみてくれ。そして、自分の体内にある魔力を感じ取ってみて」

 僕は短剣を握りしめ、目を閉じ、深呼吸をしながら、自分の体内を探ってみた。最初は何も感じられなかったが、しばらくすると、手の平から薄く光が漏れているのを感じた。


「あ、何か感じます」

「よし、さすがだね。それが君の魔力だ。その光を体内で循環させて、短剣に貯めるイメージで、いったん短剣にユウト君の魔力を流し込んでみよう。おお、そうそう、本当にいい感じだね」

 エルドさんの指示通り、僕は光を循環させ、短剣を通じて自分の全身にある魔力を流し込んでみた。その瞬間、体中がピリピリと熱くなり、意識が広がっていくような感覚を覚えた。


「わっ、すごい! 体中に熱が広がっている気がします!」

「うん、それが魔力の力だ。まず第一段階クリアだ。これからは、この力を自由自在に操れるようになっていかなきゃあだね。そのためにはまずは制御を学ばないとだ」

 エルドさんは優しく微笑んで、僕に制御の仕方を教えてくれた。

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