大川さま、広河さま、そしてふたりを懐柔……いえ、虜にした比多米売のお話

前半が大川さまの幼少時のすがすがしくも哀愁漂うエピソード、そして後半が青春時代の衝撃的なお話となっています。

青年大川さまはなぜ言い寄る女性をことごとく寄せ付けなかったのか、そのきっかけとなった出来事には心が痛みます。その出来事は別の視点からも語られるのですが、これがまた力強過ぎて、大川さまへの憐憫の気持ちがみるみるうちに薄れ、比多米売への驚嘆、賞賛、感服の念がむくむくと湧きあがってきます。

広河さまと大川さま兄弟の物語を主軸に据えながら、終盤は、最下層の身分に落ちた比多米売が自分の力でのし上がってこの世を生き延び、女性としての幸せをつかむ様子がドラマを見るように繰り広げられていきます。

狙った男に食らいついて離さない悪女比多米売の魅力がたまりません。

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