ゆめ十夜、或いは十人十色の夢の中
こんな夢を見たんだ。
俺は1匹の蝶でさ、自由自在に空を飛んでるんだ。そんな経験そうはできないから花から花へ飛び移って……。なんだよ、似合わないってか? 夢なんだから好きにさせろよ。でだ、いよいよ大空に飛び出そうとしたら虫取網で捕まえられて目が覚めたんだ。
酷いオチだと思わないか?
こんな夢を見た
鳥になっていた。胡蝶の夢とは言うがこの場合はなんと言うんだろうな。ヨダカの夢だろうか。とにかく高く空高く飛び続けないといけない気がして必死に翼を動かした。そしたら眩い月が目の前に迫ってきて後少しで触れそうになった。その時、銃声がして目が覚めた。ん、酷いオチとは思わんが、月に触れていたら何が起きていたのかは気になるな。
こんな夢を見たんだけど
なんだったんだろう。
海の底に青く輝く光の穴があって
色々な生き物と一緒にそこを目指していた。
穴の向こうには同じ様に色々な生き物がこちらを目指していた。境界面を越えようという時、巨大な隕石が突然現れて全てを破壊していった。
本当に一体なんだったのだろう。
こんな夢を見ましたわ
レッサーパンダですわ。
なんですの、その目は。
レッサーパンダは至高なんですの。
無数のレッサーパンダに囲まれていましたわ。ご存じですの。野生のレッサーパンダの生息数は5000頭以下ですわ。それが見渡す限りのレッサーパンダ。至福の時でしたわ。
だと言いますのに、いきなり檻に入れられましたわ、わたくしが。手を伸ばせば触れられる距離でしたのにご丁寧に金網まで張ってありましたわ。マジ許すまじですわー。
こんな夢を見たのよ
小さい頃のコウ……、弟を追いかけていたのよ。私は今の姿だったのにね。夢なんてそんなものなんでしょうけど。声をかけても振り返りもしない弟に追い付いて肩に手を掛けようとしたところで誰かに手を引かれて目が覚めたのよ。なんだったのかしらね。
こんな夢を見たの
和スイーツバイキングってあるじゃない。時間無制限食べ放題で次から次に色々持ってきてくれるのよ。抹茶ロールにお米のタルトに豆乳プリンに甘酒白玉のフルーツポンチ、ほうじ茶ラテもあったかな。きな粉ロールも美味しかったなあ。味をしっかり感じたのは不思議だったけど。
ほら、夢だからどれだけも食べられるし。さあもう一巡と思ったんだけど、いきなり本日終了って札を見せられて目が覚めちゃった。
もう少し食べていたかったんだけどなぁー。
こんな夢を見ました
小さな頃の夢だと思います。はい、わたしはここに来る前の記憶がないので自信はないですけど。
夕焼けに染まったあぜ道を真っ直ぐに何処かに向かっています。向かう先は真っ赤です。まるで燃えているみたいに揺らめいて。とても不安で逃げ出してしまいたいのに、足は勝手に動き続けていました。
その時、揺めきの中から誰かが走ってきました。そしてわたしを抱えあげ夕日から離れようとしたんです。
あの、あなたはひょっとして……。
こんな夢を見たんですよ
暴風と月光と陽光が睨み合っていたんですよ。そのままであれば大変なことになっていたでしょうね。何せ三界を支配するモノ達です。さてどうしたものかと思案していると誰かが全て殴り飛ばしていきました。いやぁ強引なしかし有無を言わさぬ鮮やかな手際でしたね。
助かりました。あれがなんであれ、あのままでは刺し違えてでも止めなくてはいけませんでしたから。
こんな夢を見たんだよ
気がつけば雪深い山のお屋敷の前にいたんだ。僕は閃いたね。これはクローズドサークルだって。雪山の山荘ときたらこれ以外ないだろう!!
お屋敷には先客がいる気配があって僕はなおさら嬉しくなったんだ。僕は招かれざる来訪者つまり探偵役だってね。もう喜び勇んで扉を開けようとしたさ。そしたら後ろから『この馬鹿っ』って声と一緒に思いっきり叩かれたんだよ。
ねえ君は何か心当たりがあるんじゃないのかな?
こんな夢を見た
そういう訳だから、覚悟してもらおうか。
あんたにゃあんたの理屈があって、存在していくのに必要な行為なんだろうけれど、幾らなんでも入り込んだ夢の主を一々殺そうとするのはやり過ぎなんだよ。
俺だって散々人の夢にお邪魔している訳だから偉そうなことを言えた立場じゃない訳だけれどね? だからって知ってる顔が殺されそうだってのに『はいそうですか』って見逃す訳にはいかないよね。
大体その都度感謝されたい訳じゃないけれど、危機一髪、間一髪の所を助けたってのに文句を言われるってのはちょっと堪えるから、これっきりにしたい訳なんだよ。
だから、一切合切理屈抜き手加減無用で退治させてもらう。
夢幻交渉人 此木晶(しょう) @syou2022
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