脱サラしたお父さんが一番すごい

  • ★★★ Excellent!!!

現実世界に出現した未知のダンジョン。それを攻略する探索者として、C級まで上り詰めた八代夜一だが、試練の魔物と呼ばれる強敵に敗北を喫する。結果としてチームは解散、八代も片目の視力を失う。既に探索者として再起不能と周囲に思われていた彼だが、ある日リベンジの機会が訪れる。


最近はやりのダンジョン配信ものと違い、ダンジョンがもたらす資源や技術が、一つの産業として成立している世界観だ。
そんな中でいち早くダンジョン出現をビジネスチャンスと捉え、起業して大成功した主人公の父親がすごい。ゴールドラッシュで一番儲かったのは、砂金掘りの道具を売っていた業者だと言うがさもありなん。自ら危険を犯すより、どこに金が流れるのかを考えて商売をする方が絶対に儲かるよな。

作品世界の人間が、おおむね合理的な行動を取るおかげで、俺ならこうするのにという違和感がなく納得のいく世界観が出来上がっている。
会社をあげてパワーレベリングしてるとこなんて初めて見たよ。でも、レベルアップの恩恵がダンジョン外でもあるなら絶対そうするよな、俺だってそうする。


そんな感じでお父さんの慧眼が目立っているが、この親にしてこの子ありというか、主人公も相当にクレバーなタイプだ。あらすじを見ると復讐に燃える男のような印象を受けるかも知れないが、本人は追いつめられるまでは常に冷静。
なるべく効率のいい成長戦略を考えてステータスを上げたり、勝てない敵にはアイテムを集めて徹底的にメタを張ったりと、クレバーに攻略を進めていく。


主人公を主人公たらしめる要素が、その手段を選ばぬ性格と組織の力がバックにあるから、とちゃんと理屈が通っているのがこの作品の特徴である。後から他の力を得たりもするが、基本的に最適解を探す努力をしているから、そして自らの命すら時に省みない狂った情熱を持っているから特別な存在なのだ。

つまりはダンジョンのガチ攻略勢、その先頭に立っている。
そういう主人公が好き、という方にはおすすめできる一作だ。

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