氷の死病と悔恨の熱

凍てつく大気に蔓延する病により、誰もが口もとを隠して暮らす――という私たちも翻弄された状況に近似する世界が舞台。
だけどこの世界の病気はもっとファンタジーで恐ろしい。人が氷となって消えるのだから。

そんな〈氷の女神症候群〉と戦い、あるいは共存していく人々の群像劇です。
メインは特効薬の原料を調達するキャラバン隊員。彼らがそれぞれに過去を抱えていて、その鬱屈がイイ。
少年とオッサンとおじさんとお兄さんたちが殴り合ったり寄り添ったりします。
冒頭ではなんてことない隊員の一人にすぎなかった人に、きちんと背負うものがあり人生がにじむ。まあ大体は悔いが残る何かなのですが。

舞台設定も緻密ですが、人間模様を深く描いた物語です。

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