神々の戦場で見た、それぞれの愛のかたち
- ★★★ Excellent!!!
かつて“暗黒神”と呼ばれたヴァイロという青年が、癒し手リンネの静かな愛に包まれ、穏やかな日々を過ごしている――その光景に、まず胸がじんわりと温かくなりました。けれど、彼の中に眠る戦士の本能が、ある絵との出会いをきっかけに再び目を覚まします。
優しい日常と、避けられぬ運命。その対比があまりにも切なく、美しいのです。リンネの名に込められた“輪廻”の意味もまた、二人の関係に深みを与えてくれます。
そして現れる剣士エディウスと白竜シグノ。戦いの中で交わされるのは、剣と魔法だけではありません。交錯する言葉と思い――それはまるで魂と魂の対話のようで、読みながら何度も胸がふるえました。登場人物たちの揺れる心情もまた丁寧に描かれていて、ふとページを閉じたあとにも、その温度がじんわりと残りました。
これは、過去を背負いながらも、再生へと歩む祈りのような物語。どうか、そっと心を澄ませて味わってみてください。