第34話

それから一週間後、マサシの顔も髪の毛も元通りになっていた。



学校へ行く前日に思い切って前髪を切りに行った。



眉毛が見えてしまうくらい短い前髪にしたことはなかったので、なんだか気恥ずかしい。



恐る恐るA組の戸を開けて中に入ると、一瞬みんなの視線を感じた。



すぐに身構えて立ち止まる。



またからかわれるんじゃないか。



笑われるんじゃないかと不安が膨らんできて、うまく笑顔を作ることもできない。



ぎこちなく自分の席へ向かおうとしたとき「髪切ったんだね、似合ってるじゃん!」と、ノリコが声をかけてくれた。



「う、うん」



照れて頭をかきながら頷く。



するとすぐに数人のクラスメートたちが近づいてきた。



「本当だ、すごく似合ってる!」



「マサシ君ってかっこよかったんだね」



「そ、そんなことないよ。一番カッコイイのはヒデアキだから」



褒められ慣れていないマサシはもじもじしながらそう言った。



ヒデアキは自分の席で笑っている。



「それに、スポーツが得意なのはタカヒロだ。勉強はチナで、リーダーシップは

ノリコ」



ノリコは嬉しそうに微笑んだ。



「クラスで一番可愛い男子はマサシ」



ノリコに指をそう言われ、マサシは泣きそうになってしまった。



クラスの生徒達にはそれぞれ役割があって、それでも自分は何者にもなれていないと思っていた。



でも違うんだ。



持って生まれたままの自分の中にもなにか特別なものは隠されている。



それに気がつけるかどうかで未来は大きく変わってくるんだ。



「チナ、俺に勉強を教えてよ。それからタカヒロ、サッカーの練習見に行ってもいいか? あとノリコ、次のクラス会なんだけど、俺やりたいことがあるんだ。それにヒデアキ、俺に似合ってる服を教えてよ」



4人は顔を見合わせて微笑みあう。



そして「もちろん!」と、声をあわせて頷いたのだった。


☆☆☆



隣の芝は青く見える。



他人の才能ほど輝かしく見えるものなのかもしれませんね。



だけど最後に努力するのは自分自身。



彼はそのことに気がつくことができたようです。



さぁ、今回の恐怖記録はここまで。



またお会いできる日を楽しみにしています。




END

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闇夜ヨルの恐怖記録2 西羽咲 花月 @katsuki03

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