第52話(由美視点)

 矢内君と一緒に登校してきたその日のお昼休み。


 今日は同じクラスの女子友達と一緒にお昼ご飯を食べていた。すると友達の一人がとても嬉しそうな顔をしながらこんな事を喋り出してきた。


「あ、そうだ! そういえばさ、今日は隣駅の男子校と男の子と遊ぶ約束したんだよねー!」

「え、そうなの? あはは、アンタ男の子と遊びすぎでしょー! でも良いなー羨ましいなー! 私も男の子と遊びたいなー!」

「あはは、そう言うと思った! だから向こうの男の子にお願いしてさ、今日は何人かフリーの男の子を連れてきてくれるって! だから今日の放課後は皆でその男子達と合流して一緒に遊びに行かない?」

「えっ! 行きたい行きたい! え、ちなみに顔とかはどうなのかな? ちゃんとイケメンかな??」

「あぁ、うん! もちろんカッコ良くてフリーの男の子達を集めておくって言ってくれてたから大丈夫だよ! 皆運動部で腹筋割れてるイケメンを紹介してくれるってさ! あっ、そうだ、これが向こうから送られてきた写真ね!」

「え、どれどれ……って、うわ! マジで皆イケメン揃いじゃん! あはは、これはすっごく楽しみだね! ね、由美もそう思うよね!」

「……ん?」


 私はコンビニで買ってきた菓子パンを食べながらボーっと過ごしていたら、唐突に私の方に話題を振られてきてしまった。なので私はキョトンとした表情をしながら友達の方に視線を送っていった。


「え……って、ちゃんと私達の話聞いてたの?」

「あぁ、うん、もちろん! 隣駅の男子達と合コン行くんでしょ? 皆で楽しんできてね!」

「え? いやそんな他人事みたいな感じで言ってるけど……でも由美も一緒に行くに決まってるでしょ?」

「そうだよそうだよ、一緒に行こうよー! ほら、由美だってもうそろそろ前カレの事もふっ切れた頃でしょ? だから由美も一緒に合コン行こうよー! 今日はイケメン揃いで絶対に楽しいはずだしさ!」


 今友達が言ってきたように、私はここしばらくの間は合コンなんて全くといって良い程に参加していなかった。その理由は元カレがゴミクズ過ぎる男だったからだ。


 そしてその元カレの事が本当にムカついていたのでしばらくは彼氏なんて作らないでいいやと思っていたんだ。だから私は友達が誘ってくる合コンはいつもずっと断ってきていたんだ。だけど今は……。


「え? いや私彼氏いるから無理だけど?」

「「え……えぇぇっ!?」」


 だけど今の私には彼氏がいるから合コンはいけないと言って断った。すると私の合コンを断る理由がいつもと変わった事で友達は皆一斉に驚いたような顔をしだしていった。


「え……ちょ、ちょっと待ってよ!? ゆ、由美って彼氏いたの!? いやいつの間に彼氏作ったのよ!?」

「そ、そうだよ! 彼氏出来たんならちゃんと私達にしっかりと報告しなきゃ駄目じゃんー! え、今度の彼氏はどんな子なの? やっぱりまたイケメン??」

「……え? いやいや、皆して何言ってんのよ? 私は今は矢内君と付き合ってるじゃん?」

「……え?」

「……は?」


 私がさも当然だと言わんばかりにそう言ってみると、周りの友達は皆一斉にガッカリとした様子を見せてきていた。


「あぁ、何だそう言う事かぁ……って、いや由美に新しい彼氏が出来たのかと思ってビックリしちゃったじゃん!」

「あはは、本当にそうだよね! というか矢内と付き合ってるって……それって結構昔にやった罰ゲームの遊びでしょ? まだ由美ってアイツと嘘で付き合ってたの? あはは、もう結構時間も経ってるんだしさっさと別れなよー?」

「いや本当本当! 私達が女子高生でいられる時間なんてたったの三年間しかないんだしさ! だからそんな罰ゲームのあり得ない嘘彼氏の事なんてさっさと振ってさ、早く本命の彼氏を一緒に作りにいこうよー!」


 周りの友達はこぞって笑いながらそんな事を言い始めていった。でも私は菓子パンをもぐもぐと食べながらもこう返事を返していった。


「うーん? いや別に私さ……今の所は矢内君と別れるつもりはないよ?」

「……え?」

「……は?」

「……え?」


 私がそんな事を言うと、楽しそうだった周りの友達は一斉に固まってしまった。あれ、そんなに変な事を言ったつもりはないんだけどな……?


「……あれ? 私そんなに変な事を言ったかな?」

「……えっ!? え、えぇっと……いや絶対に変でしょ!!」

「そ、そうだよ! 由美と矢内なんて全然釣り合ってないじゃん! 由美には矢内なんかよりももっとカッコ良い男の子の方が絶対に似合うって!」

「うんうん! そうだよ! だから今日の合コン一緒に行こうよ! それに今回の相手の男子は皆すっごくイケメンなんだよ? だから絶対に由美も楽しめるって!」


 そう言って友達は今日遊ぶ予定の男子の写真を私にも見せてきてくれた。うーん、これは確かに皆物凄くカッコ良いイケメン達のようだ。まぁでも……。


「うーん、まぁでも私……イケメンとかにはあんまり興味ないからなぁ。というかイケメンよりも優しい人の方が普通に好きだしさ」

「い、いやいや、絶対にこの男子達も皆優しいに決まってるって! こんなカッコ良い男の子達が性格悪いなんてわけないじゃん!」

「そうだよそうだよ! きっとこの男子達と話してみたら皆由美に優しくしてくれるよ!」

「うーん、そりゃあ確かに話してみたら皆優しい男子なのかもしれないけど……まぁでも今日はもう予定が入っちゃってるからやっぱり無理だよ。だから今日は私の分まで皆で楽しんできてよ」


 ま、そもそも今日の放課後には矢内君と勉強会をする予定だったから、流石に今の私がフリーだったとしても今日の合コンに参加するつもりは全くなかった。だって先に入れていた予定をブッチしてまで違う予定を優先しようとするのは人としてあまりにも最低な行為だしね。


「あぁ、うん……そっかぁ。まぁ予定が入ってるんなら仕方ないね」

「うん、だから私の分までイケメンの彼氏作って来てね。あとはまた皆の感想話とかも楽しみにしてるからさ」


 という事で私は放課後に開催される友達の合コンの成功を祈りつつも、私は私で矢内君との勉強会を楽しみにしていった。

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スクールカースト最上位のギャルが噓告白をしてきたので付き合ってみた話。 tama @siratamak

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