エピローグ 恋心
「じゃあ、また明日ね」
私は家の鍵を取り出し、鍵穴を回す。扉が「ガチャ」と音を発し、私は家の中へ足を踏み込む。その時、後ろから大羽君が
「あの、、氷柱さん、明日、、一緒に、登校、、しませんか?」
彼はつまりながら、なぜか敬語になりながら、私を誘ってくれた。私は頷くつもりでいたが、その前に彼は慌てた様子で続ける。
「なんか付き合ってる人たちって、一緒に登校してるイメージがあるから、、みんなに関係をアピールできるチャンスかもしれないし、、、付き合ってるふりだけど、、どうかな?」
次は早口で、いつもどうりの口調で言い切った。彼の様子に違和感を覚えたが、彼の理由には納得できる。なにより、私は彼と一緒に居る時間が増えてほしいと思っていたので
「いいよ、そうしようか」
私が彼の言い終わるのと同時にそういうと、すんなりと承諾したのかが意外だったのか、彼は軽く拍子抜けしていた。
「じゃあ、また明日ね」
彼は唖然としていたので、私はこう声をかけた。もうすでに八時を半刻は過ぎていて、私もそろそろ家事を始めないと時間的に厳しくなってくる。
「あ、、うん、また明日」
彼は私が扉を閉めるまで私の家の前で見守ってくれていた。
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「僕は氷柱さんのことが好きなのかな?」
薄暗い夜道には僕と街灯だけが立っていて、少し不気味な雰囲気を帯びていた。
僕自身はそんなこと気にすることはなく、自問自答を重ねていた。
僕は氷柱さんのことをどう思っているのだろうか。
ただ自分を手伝ってくれるだけの人なのか、それとも、僕が恋をしている相手なのか。多分答えはもう出ている。その答えが暴走した結果が、あの『お誘い』なのだから、、、
しかし、その答えを全力で否定しようとする僕が頭の中に居る。
彼女は恋や愛がなんだかわからないと言う、だけど、僕を手伝ってくれると言ってくれた、付き合っているフリをしてくれると言ってくれた。だから、僕は彼女を厚意を無下にすることなどできない、僕の恋愛感情で振り回してはいけない。
それに、彼女は僕のことを安心できる『居場所』と言ってくれた。彼女は僕のことを信頼してくれた。そんな彼女のことを自分の一方的な恋愛感情で裏切っていいはずがない。
頭の中の僕はこういって僕を説得しようとする。だけど、何よりも素直な心の中の僕はこの感情を恋だといっていた。
現実はラブコメより甘酸っぱい 薄明 黎 @singononote
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