第一話 関係の始まり
「僕に付き合ってください!」
私は手に持ったオレンジジュースが同化しそうな夕暮れの空と、緑色のフェンスを背景に、ガチガチに緊張している男子、大羽隼斗と向かい合っていた。
私は自分で言うのも何だが、結構な回数告白されてきた。
しかし、私と付き合ったって面白いことなどないし、まずこちら側から恋情を抱くことなどないのだから、相手のためにもすべて断ってきた。
今回もいつも通り屋上に呼び出され、いつも通り告白され、いつも通り無難にあしらうつもりだった。
しかし、今回の告白は何かいつもと違う感じがした。
「え、、ん?もう一回言ってくれ」
「え、あ、、僕に付き合ってください」
彼はさっきと同じトーンで言う
やっぱり、聞き間違いじゃないよな、、
彼は明らかに『に』と言っている、私は彼の告白の意図を探るため、彼に言葉を返した。
「どういうことだ?私に何をさせるつもりなんだ?」
私は彼に一片の興味を抱いた。
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僕は某小説投稿サイトで小説を書いている、小説家志望の高校二年生だ。
まぁ、今のところ底辺のほうにいるわけなのだが、、、
いつの日だったか、SNSを徘徊していると、
『作家は経験したことしか書けない』という
初めて見たときは、『そんなわけない』と思っていたのだが、自分の小説に対する評価や意見などを見ると、『もしかして、、』と思うようになってしまった。
一度そう考えてしまうと全てをそう感じてしまうわけで、最終的に僕はクラスの一軍にいて、僕の書きたい理想のヒロイン像にピッタリな女子、
具体的には、ちょっと外出して、それをデートの参考にしたり、いろいろと意見を聞いたりするつもりだ。
そして今日、彼女に頼むと心に決めたのだが、どうしていいのか分からず、屋上へ呼び出し、そこで手伝ってほしい旨を伝えるという予定を立てたのだが、なぜか緊張して愛の告白のような言い方になってしまった。
彼女も何かを感じ取ったのか、僕に何と言ったか確かめる。僕はさっき言った言葉をリピートする、すると彼女はこれが告白ではないと理解したようで
「どういうことだ?私に何をさせるつもりなんだ?」
そう問いかけてきた。
僕は理由と要件を彼女にはっきりと伝えた、その間彼女の表情は暗くなっていく一方だった。
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「すまない、私にはできない。」
私なんかじゃヒロインのモデルなんて務まらない
そもそも、他人のことを好きになれない、愛することのできない私が、そんなことできるわけがない。
ただ、彼が自身の夢を話しているときの彼の言葉は、とても眩しかった。
彼は私にはないものを持っている、私にはない輝きを持っている。
だからこそ、私みたいなどうしようもない薄情者かつ、臆病者と一緒に居てはダメな気がした、一緒に居たら彼の輝きも私がすべてかき消してしまう。
「やっぱり無理か、、、」
彼は結果が分かっていたかのような声色で夕焼け空へ呟いた。
「でも、これも経験として頑張ってみるよ、、、」
そう言った彼の声からは輝きが消えていた。
その声を聞いた私は何を思ったか、自分がどういう人間かを独り言のように自虐していた。
「……そんなかんじで、私は薄情で、臆病で、孤独が怖い、どうしようもない人間なんだよ。だから、お前は私と一緒に居てはいけないと思う、、、いや、一緒に居たらダメだ。」
彼は
それが私にとって最も優しい対応だった。
「そう、、なんだ、、」
私がすべて吐き出しきると、彼はただこの一言を発して、下を向いていた。
それから五分ぐらいたっただろうか、彼はすぅと頭を前に戻し、輝きと優しさに満ち溢れた声で、はっきりと、私の方を向いて、そう言ってくれた
「僕はやっぱり、いや、むしろ話を聞いたからこそ、ありのままの氷柱さんをモデルにしたラブコメが書きたい。
それで、自分がどう感じているか、感情を取り戻す、、、いや、なんかちがうなぁ、、、ともかくいろんなことをしよう、そうしたら何か変わるかも」
私はほぼ初対面の彼にすべてを認められた気がした、心の奥の方で何か湧き上がるようなものがあった。懐かしいような、温かいようなものが。
彼なら『私』を演じる必要はなく、私のままで彼と接することができる。
何かがきっかけでうれしさや悲しさを感じて、取り戻すことができるかもしれない。
彼と一緒に居ることに対する負の感情はもう消えてなくなり、彼と一緒に居ようと思えるようになった。
だから、彼の目を見てしっかり返事をしようと思ったのだが、なぜか視界がぼやける。
「、、あれ?なんで、、だろう、、おおば、、くんが、、ぼやけて、、みえる」
「大丈夫?氷柱さん、ないてるよ?」
彼はそう言いながら私の手に彼のハンカチをおいてくれた。
泣いたのなんて何年ぶりだろう、私は泣くことができたらしい。
これも彼のおかげだろうか、、、
「氷柱さん、ごめんね、迷惑かけて、この話は忘れてもらっていいから」
彼は続けてそういった。その声色には申し訳なさにあふれていた。彼はあきらめようとしているのだろう。
「そんなこと、、ないよ、、、私も、、おおばくん、、と、、一緒に、、いたい。」
私はやっと私を認めてくれる人ができたという安心感。その人を手放したくない、もう私一人になりたくないという気持ちで、立ち上がろうとしていた大羽君の手をつかんだ。
彼は一瞬呆気にとられたような表情をしたが、すぐに優しく手を握り返してくれた。
彼の手は、私のとは違ってとても暖かくて、あの厚い氷が少し溶けだしたような気がした。
彼と一緒に居れば、本当に何かが変わっていくかもしれない。
「よろしくね、大羽君」
「よろしく、、、氷柱さん」
その時から私たちの不思議な関係は始まった。
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