美しく幽玄の庭にて

とにかく美しいのです。
この世のものとも思えない美を持つ幼い少女が、花簪しゃらりと涼しげな音を響かせ、桜の庭を舞っています。

もう最初から最後まで、隅から隅まで、作者さまの美意識が徹底されています。
お互いを想い合う、桜の精霊と、不遇な予備役軍人。
恋人。夫婦。そのような無粋な枠組みはこの二人には不要なのです。
ただひたすらに、お互いを大切に想い、一緒にいられる時間を噛み締め、相手だけを、想っているのです。

そんな素敵な関係性のうえに、目にも鮮やかな美しいシーンをこの作者さまは描き出します。
最後のシーンの、花霞の、美しいことよ。
読んだら、ちょっと忘れられなくなるくらいの美しさです。

ぜひご一読を。
読まないなんて、もったいないですよ。

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