文字が絵を描く。愛しい家族の姿が見えてくる。

5歳のリィンは、子供らしい素直さと、のびやかさがありますが、そのほかのキャラクターたちは、かなり感情を抑えた表現をされているように感じます。

中でも本作の裏の主人公であるダレンは、声で人を縛る力を持つ種族です。
力を隠すために妻の前でも娘の前でも、常に心を乱さないように暮らしています。
生まれや育ちの理不尽を吞み込んで、いつも穏やかに話すダレンが最高に格好いい。

しかしそんなダレンの態度故に、硬直していた夫婦の間柄は、リィンが毛玉ゴーレムを連れ帰ったことで大きく動き出します。

直接的に心情を吐露するようなシーンはほとんどないのに、仕草や景色が、雄弁に揺れる彼らの感情を伝えてきます。
これがもう、猛烈に心に刺さりました。

昭和五十年代くらいのテクノロジー持った異世界には、テレビも電車も出てきます。
そこに異種族と歴史と、魔法や呪術の設定が乗っているのも、とても魅力的です。

全体を通して描写がとても細密で、一枚の美しい絵画を見ているような、描き込まれたアニメを見ているような感動があります。
地の文がもっと上手く書けるようになりたいな、と思っている方には、とても参考になる作品だと思いますので、ぜひ拝読してその技術を盗ませてもらいましょう。


そして何より、リィンと毛玉ゴーレムの「もっもっ」が100%かわいいので、ぜひ!