ずっと好きだった幼なじみがウソコクされた

したらき

読み切り

「このあいだの罰ゲームの件、影森優にウソコクね!」



学校帰り友達のよっちゃん・ゆいちゃん・てるみちゃんと高校の最寄駅近くのファミレスでお茶をしていたら、大好きな幼なじみの名前が聞こえてきたので思わずそちらの様子をうかがったら優くんと同じクラスの派手な女子3人組が話していた。



「あの陰キャに?」


「そうそう。罰ゲームにふさわしいでしょ」


「いっつもひとりで本読んでて、なに考えているかわかんないじゃん」


「だから罰ゲームになるでしょ?」


「ひっどー」



よっちゃん達は高校からの付き合いで優くんとは接点がないから気付いていないけど、わたしは気が気ではない。家がお隣で物心付いた時からずっと一緒で大好きな彼が嘘告されるというのだから!



3人の話をまとめると、金髪に染めている一番派手な美浜さんが明日の放課後に優くんを呼び出して嘘告し、1ヶ月付き合ったらネタバラシするということらしい。


罰ゲームだから恋人関係が続くということはないだろうけど、優くんが傷つくのは嫌だし、一時の嘘でも優くんに彼女ができるのも嫌だ。でも、どうしたら良いのかわからない。



焦る気持ちだけで何も考えられず、よっちゃん達と何を話していたのかわからないままファミレスを後にしてみんなとお別れした。



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何もできないまま時間だけが過ぎ美浜さんが嘘告する放課後になってしまった。


こっそり優くんを尾行していくと、校舎の隅の空き教室に入っていき美浜さんがひとりで待っていた。



「あっ、影森くん。呼び出してゴメンね。来てくれてありがとう」


「気にしないでいいよ。用事はないし時間はあるから。それで、用件は何かな?」


「影森くんのこと良いなって思ってて、付き合ってもらいたいなって・・・どうかな?」


「正直、僕はパッとしないと思うのだけど、どこが良いと思ってくれたの?」


「うっ、そっ、そう!物静かで落ち着いているところ!すごくいいと思う!」


「そんな風に思ってくれていたんだ、ありがとう。こちらこそよろしくね」



優くんが美浜さんに笑顔で答える。私も久しぶりに見たくらいにいい笑顔で、それが自分ではなく嘘告の相手に向けられていると思うととても苦しい。



「そっ、それでさっ。悪いんだけど、恥ずかしいから、だっ、誰にもナイショで付き合えないかな?」


「わかった。秘密のお付き合いだね」


「それでよろしく!さっそくなんだけど、これからどこか行かない?」


「いいよ。どこへ行こうか?」



初々しい本物のカップルにしか見えないやりとりで、これ以上見ているのがつらくて逃げ出した。



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その日の帰宅後、優くんから相談があるとの連絡があったので近所の公園で待ち合わせた。



「初歌、わざわざありがとう」


「いいよ。それで、優くんの相談って何かな?」


「実は今日告白されて付き合うことになったんだけど、少しでもカッコよくなりたくてアドバイスをもらいたいなって思ってさ」


「そうなんだ。今のままでも全然いいと思うけど、美容院でカットしてもらって、その時セットの仕方を教えてもらえばそれだけでもずいぶん変わると思う」


「美容院か・・・行ったことないから気が引けるな」


「わたしの行っているお店の担当さんは話しやすいしセンスがある人だから紹介しようか?」


「助かる!さすが初歌様々だ」



本当はそんな事をしたくなかったけど、頼られて嬉しい気持ちもあって翌日の土曜に美容院へ行き、その流れで服を見にいく約束をした。



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「初歌ちゃんのカレシ、最高にカッコよくしてあげるね」


「優くんは幼なじみなだけで、カレシじゃないんですよ。それに彼女さんに悪いですよ」


「へぇ、そうなんだぁ。お似合いだと思うけど」


「そんなっ、初歌と野暮ったい僕じゃ釣り合わないですよ」



中学の時からずっと担当してもらっている美容師のあかねさんは、冷やかしながらも丁寧に優くんをスタイリングしていく。普段も悪くないけど、見違えるほどカッコよく仕上がっていてドキドキする。


あかねさんは仕上げをしながら自分でスタイリングするやり方と、更に眉カットの仕方も優くんに教えてあげてた。休日で忙しいはずなのに本当に良い人だ。


わたしも近いうちにカットしてもらう話をして服を見に繰り出した。



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「初歌、今日は美容院と服選びに付き合ってくれてありがとう」


「どういたしまして。私も久しぶりに優くんとお出掛けできて嬉しかったし、カッコよくなった優くんのコーディネートも楽しかったよ」



わたしの趣味に偏ってるけど、すごく似合うカッコよく見える服が買えたと思う。これを美浜さんのために買ったというのが悔しいけどしょうがない。1ヶ月の我慢。美浜さんは別れるつもりなんだし、今度はわたしが本物の告白をしよう。



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優くんと美浜さんが付き合い始めて半月が過ぎた日の放課後、美浜さん達だけが優くん達のクラスの教室に残って話をしていた。



「鈴さぁ、罰ゲームの残りあと半月あるけど影森と付き合うの我慢できる?」


「それなんだけどさ、アタシ優のことマジで好きになったんだよね。普段は全然しゃべらないけど話すと面白いし、気遣いが細やかで優しいし、格好も付き合うようになって整えるようになったから悪くないし、このままホントに付き合っちゃおうかなって思うんだよね」


「たしかにすずっちと付き合うようになってから髪切って眉整えて見た目は良くなってるね。それに内面も意外で惚れちゃったかぁ」


「まさか鈴が影森に惚れるとは思わなかったよ。でも、それならそれでいいんじゃね?」



美浜さんが優くんと別れる気がない・・・それじゃあ、わたしはどうしたらいいの?



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美浜さんの嘘告から1ヶ月の日を過ぎたけど、優くんと別れていない・・・美浜さんは遊びで告白した嘘つきなのに、そんな人に優くんを取られるなんて・・・



「初歌ちゃん、体調が悪そうだけど大丈夫?」


「てるみちゃん・・・実は・・・




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※美浜鈴視点



「優、付き合い始めて1ヶ月が過ぎたんだしさ、アタシのこと『鈴』って名前で呼んでくれない?」


「そう言えば美浜さんと付き合い始めて1ヶ月過ぎたんだね。じゃあ、お別れだね」


「え?どういうこと?」


「だって、美浜さんは罰ゲームで僕に嘘の告白をしたんでしょ?そして1ヶ月で別れるって大山さん達と言ってたじゃない」


「そ、それは・・・そうだけど、今は優とずっと付き合いたいって思ってる!嘘の告白だったのは謝る!だから別れないで!」


「僕は嫌だから、これで付き合いはおしまいだね。人の気持ちを弄ぶような人は嫌いだから学校の用事がない時は声を掛けないでね。じゃあ」


「ちょっと、待って!」



優は決別の言葉を言い終えると、引き止める言葉にも反応せず行ってしまった。


たしかに最初は罰ゲームで嘘告した。でも、優のことを本気で好きになってた。見た目もカッコよくなったし、優しいし、話も面白い・・・こんな良いヤツをアタシはバカにして遊んだんだからバチが当たったんだな。


たしかに、こんなクズ女と付き合いたいわけないな、ははっ。



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※影森優視点



大好きな幼なじみの初歌に高校になってから男友達ができた。初歌は同じグループの女友達と同じ様に『てるみちゃん』なんて女の子みたいな呼び方をしているけど石田照美君は初歌のことが好きなことが傍から見ていてわかった。


同じクラスで男女関係なく人気のある石田君としょっちゅう遊んでいるのだから、気が気ではなかった。



そんなことで悶々としていた中1ヶ月前に、たまたま初歌と石田君たち男女2対2の4人で駅前のファミレスに入っていくのを見掛け、こっそり様子を見ていたら美浜さん達カースト上位女子3人組で話をしていて僕に嘘告をするという事を知った。


位置的に初歌には聞こえていなかったと思うので、美浜さんの嘘告を利用して『クラスの女子と付き合ったけどすぐにフラれた』と言う状況を作り、初歌に男として意識してもらおうと思い美浜さんの嘘告に気付かないフリをして付き合うことにした。


美浜さんと付き合うことになった日に初歌に相談という形で知らせて、更に協力してもらうという口実で1日付き合ってもらった。僕が他の女の子と付き合うことになったと言っても動揺している感じもなく初歌はいつもどおりの雰囲気で、男として意識されていないのではないかとガッカリしたけど、美容院で髪を切りおしゃれな服を着た時はいい笑顔で誉めてくれたし諦めないで頑張ろうと思った。


嘘告は腹が立ったけど、僕も状況を利用するわけで美浜さんにはいつものように接してたし、特に問題もなく1ヶ月が過ぎていった。隠れてとは言え美浜さんと話をするのは楽しかったから『1ヶ月が過ぎた』と言われるまで付き合いの期限が過ぎていることに気付かなかったからので思い立ったように別れを告げてしまい、言い方がキツくなってしまったのは申し訳なかったと思う。



美浜さんと別れたので初歌に告白をしようと思うが、どうやってアプローチしたら良いのか悩んでしまう。


どうしようか悩んでいる間に美浜さんがクラスでも声を掛けてくるようになり、別れを告げた時は言い方がキツくなってしまったし嘘告は悪ふざけが過ぎていたと思うけど基本的にいい人なのは1ヶ月の付き合いで理解していたので、友達のように接する様になっていた。



美浜さんの嘘告から2ヶ月位が過ぎたころ母親から衝撃的な話も聞かされた。


初歌は僕のことが好きだったのに、その僕に彼女ができてしまってショックで落ち込んでいたところを石田君が慰めてくれている内に、彼に惹かれて付き合うようになったということを、初歌の母親から聞いたとのこと。



僕が変なことを考えずに勇気を出して告白していたら初歌と付き合えたということだ・・・美浜さんに『人の気持ちを弄ぶような人は嫌い』と言った本人も人の気持ちを弄ぼうとして、そのために機会を逃してしまった・・・よく言えたものだ・・・自己嫌悪に陥る。




評判では石田君はいい人みたいだし、僕と違い学校中の人気者だから初歌はきっと幸せになれる・・・でも、初歌の隣には僕がいたかったなぁ。

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