全381話完結です。
これを読まずして何を読む、というぐらい素敵な恋愛ファンタジーです。
主人公の第二王子カウティスと水の精霊セルフィーネ、この種族を越えた二人が物語の核であり、二人を中心に様々な要素が組み合わさって構成されています。
二人はもちろんのこと、全ての登場人物が魅力に溢れ、中には嫌な者も登場しますが、それらも含めて愛しく感じてしまいます。
それは偏に作者様が紡がれる優しい文章、そして描きこまれた人物描写のなせる業でしょう。
本作の主題はやはり「愛」だと私的に思います。愛にも色々な種類があります。
情愛には両親、兄弟姉妹、恋人、友人等が含まれる一方、憎悪にはそれこそ敵が対象となります。
それらが情緒豊かに描かれ、ずんと胸に響いてくるのですね。
カウティスとセルフィーネは異種族のため、数多の試練を乗り越えていかなければなりません。
時にやきもき、時にはらはら、時にもどかしく感じながら、多くの周囲の者たちに助けられ、愛を注がれ、二人は少しずつ形あるものを作り上げていきます。
その過程を経て、二人の愛はどのような昇華を迎えるのか。
ぜひとも本作を読んで確かめていただきたいです。
また、お気に入りのキャラを見つけるのもまた楽しみの一つでもあります。
ちなみにどうでもいいのですが、私は聖女アナリナが一番好きです。
きっと一話読めば、本作の魅力の虜になるに違いありません。
是非ともこの機会に触れてみてください。おすすめします。
文章が淡々としつつも、しっとりとした情緒にあふれた世界です。
第二王子と水の精霊の恋物語です。
水の精霊は、とても美しいのですが、人間が触れることはできません。
表情もほとんど動きません。
まさしく、精霊です。
そんな相手と恋愛。
もう、障害だらけですよ!
でも、本気の恋愛です。第二王子は、水の精霊しか目に入りません。
ちょっとでも、他の男が(いや女でも)水の精霊のお気に入りになったか? と思うと、嫉妬しちゃう。
そこも可愛いです。
そして、何より、水の精霊───セルフィーネが、話が進むにつれて、
めちゃくちゃ可愛くなるのです。
もう、動作が。言うことが。可愛くてしょうがない。いつまでも愛でていたくなる可愛さです。
ストーリーは、静かなようでいて、一難去ってまた一難、この先どうなっちゃうの? という、先が気になってしょうがない展開ですよ。
はじめは、第二王子が8歳、かなりお子様な年齢から始まりますが、9歳、10歳……と毎年追っていくわけではないので、ご安心を。
話がある程度進めば、「ああ、あの8歳の頃の、第二王子とセルフィーネの関係が、とても大事だったんだな。」とわかります。
この子供時代があってこその、二人の関係性なのです。
二人を取り巻く登場人物も魅力的で、応援したくなるキャラ、たくさんいます。第二王子のお兄さんも、弟も、好き。
女性キャラも、応援したくなる!
ぱっと見、派手な文章ではないかもしれませんが、読めば読むほど、セルフィーネの人ではないからこその美しさ、かつ可愛さに、読者は虜になるでしょう。
オススメですよ。
ぜひ、ご一読を!
私は、子供の頃から恋愛ものが苦手でした。しかしながら、こちらの物語は『恋愛ものが苦手』で避けては、絶対に後悔するところでした。
確かに、主題は第二王子と水の精霊の恋模様ですが、それは、言うなれば物語という布を織りなす縦糸で、横糸には細密な神話観、国の成り立ちや国家間の関係性といった歴史観、正しくその世界に生きていると感じられる登場人物たちの生き方、考え方などが、びっしりと織り込まれています。
そこには、ただ主人公二人の恋を成就させることが全てといった単調さはなく、その時代その状況に置かれれば、人は何をどう選択し、どう生きるか、といった人間性の探求のような深さがあります。恋愛ものがお好きな方は勿論、神話系、歴史系ファンタジーがお好きな方にも、きっと刺さるものがあると思います。
あと、主人公の兄弟関係および主従関係がとても素敵なので、そちらもおすすめポイントの一つです。個人的に、主人公の兄上が大好きです。
「人間の王子」と「水の精霊」の異種族間恋愛を描いたファンタジー作品です。
私が特に魅力的だと感じたのは、圧倒的に魅力的な登場人物たちですね。
魅力的という言葉が渋滞しておりますが、それほどに魅力的です。
子供ながらに負けず嫌いで努力を惜しまない真っ直ぐな主人公に、徐々に感情を開花させてゆくヒロインなど、とにかく主要な人物に好感が持てます。
また、彼らを取り巻くキャラクタたちも魅力的で、皆がそれぞれの意思を持った、生きた登場人物であることを感じさせてくれます。
兄弟愛・親子愛など、恋愛以外にもたくさんの愛を垣間見ることができます。
なかには良からぬ考えを持つ人物も登場しますが、彼らもしっかりとした信念を持った人間として描かれているため、どこか嫌いになれません。むしろ好きですね。
物語の途中で少年期から青年期への移り変わりも描かれるのですが、そこでの顔ぶれの変化や王国の変遷も魅力のひとつですね。
それはまるで、ひとつの世界の歴史を見せてもらっているかのようです。
キャラクタの心理描写のみならず、世界観の描写もとても美しいです。
私自身、まだまだ序盤のあたりを拝読させて頂いております。
しかし、読み進めるごとに感想が湧き出てくるほど、とても密度の濃いエピソードが揃っており、先を読むのが楽しみで仕方がありません。
文章が読みやすいのも良い点ですね。
ぜひ皆様にも、この素晴らしい物語をご一緒に楽しんで頂きたく、早めのレビューをさせて頂きました。
私はどちらかというと、恋愛に限らず純粋なファンタジー作品として物語を楽しんでいるのですが、そうした皆様にもご満足頂ける作品であると感じております。
紛うことなき名作です。とてもオススメです。
火の国ネイクーンを守護する水の精霊、そして幼くして出会った第二王子。二人が何年にも渡り、幾多の困難を越えて織りなす、恋愛を主軸に置いた群像劇です。
何よりも圧巻は、無駄がなく端的な筆致です。極力過分な描写を省き、それでいてぎゅっと上手に詰められた情景や心情は、本当に色鮮やかで躍動感に溢れ、読み進めていくほどに、ありありと絵が浮かんできます。それでいて読み易い事が、お勧めする理由のもっとも大きなひとつです。
同時に物語を彩るのが、個性的な多くの登場人物達です。群像劇に於いて個性の書き分けは凄く難しい部分のはずですが、非常に巧みに色分けされている為、ここもまた、「これはどこの誰だっけ…」等、引っ掛かる事なくすんなり読めてしまいます。
物語自体は、微笑ましい展開の多い王子の幼年期から始まるのですが、少しずつ年を重ね、立派になっていくにつれ、水の精霊には精霊としての問題が、王子には統治する一族ならではの危難が…と、恋愛のみに留まらない多くの辛苦が二人を待ち受けています。
特に後半、降りかかる受難はあまりに壮絶ですが、それでも読み進めてしまうのは、偏に水の精霊の変わりゆく様と、王子の着実な成長、そして一切の淀みがない二人の相思相愛があってこそ。いつの間にか家臣の様な目線で見守ってしまう事請け合いです。
最後になりますが、この物語はハッピーエンドを公言しています。どれほど苛烈な展開であっても、ゴールが決まっているんです。
余計な事を考えずに読めて、素直に先の展開が気になってしまう…そんな物語にまだ出会っていない方、是非ご一読をお薦めします。
著者も書いているように、展開はすごく穏やか。
でありながら、それが苦なのではなく、じんわりと、しかし確かな変化の歩みとして受け取れるため、確実に作品の魅力として昇華されている。
日一日を刻むように紡がれていくお話と、確実に成長を続けるカウティス王子、そして彼に感化されているのか、変化していく水の精霊。
しかし、カウティスは王子という高貴な立場で、精霊は人知を超える力を持った存在。
その二人の変化を、ただ眺めているだけの人間だけではなく、良くも悪しくも二人に影響を及ぼす影が存在する。
個人的には穏やかに結ばれてほしいなぁ、と願うばかりなのですが、この手の話はこじれてなんぼという側面もあります。
困難があればあるほど、恋愛というのは激しく燃え立つのでしょうね。
果たして二人の行く末が異種婚姻譚として落ち着くのか、それとも……。
タグの『ハッピーエンド』を信じて読み進めたいところです。(切実