妻にセーラー服を着せる、そして脱がす

矢木羽研(やきうけん)

コスプレエッチにおける脱衣についての一考察

「見て、こんなの出てきちゃった」


 今日は妻の実家の片付けをした。妻は僕の3歳下。彼女が大学4年生のときに旅行先の北海道で出会い、そのまま意気投合して交際、結婚に至る。まあその話は別の機会に語るとして、妻がそう言いながら手に持っているのは、ハンガーにかかったセーラー服である。


「私のところは中学も高校も同じセーラー服だったんだよね」

「僕も、中高で同じ学ラン着てたなぁ」


 昔ながらの学生服は標準型なので、学校による区別がなく流用できる場合も少なくない。親の立場からすれば経済的で助かったことだろう。


「ねえ、着てみて欲しい?」

「えっ、それは、えーと……」


 はっきり言って制服、特にセーラー服は大好物である。しかしいきなり即答してしまうと変態のような気がしたので言葉を濁らせてしまった。妻とはこのようなフェティシズム的な趣向の話をあまりしたことがないので余計にそう思う。学生時代に付き合っていたオタク気質な彼女の場合、お互いノリノリで性的嗜好を披露し合ったりしたものだが、その点で妻はノーマル過ぎるところがある。


「別に隠さなくたっていいのに。男の人がそういうの好きだってことくらい知ってるし。それに、わざわざしまっておいたのも友達に言われたからなんだからね」

「友達に?」

「そう。制服プレイとか喜ぶ男の人も多いし、ちゃんとしたのを買おうとすると高く付くからって。その頃はあり得ないって思ってたんだけどね」


 セーラー服からは防虫剤の匂いが漂っている。どのような意図かはさておき、大切に保管されていたのだろう。


「それで、着てほしい?」

「……はい、お願いします」

「素直でよろしい」


 彼女はにっこりと微笑みながら茶目っ気たっぷりにそう言った。


 **


「それじゃ、荷物は物置にしまっておくから休んでていいよ」

「はーい、お風呂いれとくね」


 家についたのはもう夜中である。夕食は妻の実家でごちそうしてもらったので、後はゆっくり休むだけだ。明日は休日なので夜更かしもできる。


 *


「なんとか全部収まったよ。……って!」

「お疲れ様でした」


 玄関で僕を迎えた妻はセーラー服に着替えていた。どちらかといえば童顔で小柄の上に、艶やかな黒髪をポニーテールに結んだ彼女にセーラー服はとてもよく似合っていた。


「どう?さすがに変かな?」

「変じゃない、すごく似合ってるよ」


 僕は思わず抱きしめてキスをしてしまった。玄関の段差がちょうど身長差と同じなので、お互いの顔の高さが合うのである。新婚当初は毎日、出かけるときと帰ってきたときにこうやってキスをしたものだった。


「……久しぶりだね、ここでチューするの」

「明日から、またやろうか」

「うふふ」


 僕は玄関に上がり、妻の手を取って寝室へとエスコートした。


「えー、お風呂も入ってないのに?」

「ごめん、我慢できなくなってきた」

「しょうがないなぁ」


 そう言いながらベッドに腰掛ける妻はまんざらでもなさそうである。僕は無抵抗な彼女のスカーフをほどき、ホックを外し、ファスナーを降ろして、セーラーの上着を脱がせていく。自分でもいやらしい顔をしているんだろうなと自覚しながら。


「あ、脱がせちゃうの?」

「ん?」


 上着から両肩を抜いて、完全に脱がせたところで妻が口にした。


「なんかさ、こういうのって着たままするものじゃない?」


 彼女は一体どこでそういう知識を覚えたのだろう。ただ、これについては持論がある。この機会に披露してやろう。


「例えば君が実際に高校生だったとする。彼氏の部屋に誘われて、いよいよベッドインという状況を想像してみよう」

「うん」

「そこで脱がさずにエッチしようとするような彼氏、嫌じゃない?」

「あー、確かに!」


 女性というのは服が汚れたり、しわになったりすることを非常に嫌う。一般的な教養を身に着けた女性というのは、たとえセックスの前であっても、脱いだ服はきちんと畳まないと気が済まないものである。これは、ほとんど本能的な刷り込みと言っても良いレベルだと個人的に思っている。


「もちろん状況にもよる。例えば放課後の学校、誰もいない倉庫のようなところで、一分一秒でも惜しんで今すぐヤリたい!なんて時は、パンツだけ脱がして突っ込んだりもするだろう。しかし君はそういうことするタイプじゃないよね?」

「確かに学校でエッチなんてあり得ない!落ち着いたところでゆっくり優しくしてほしいって思うし」


 彼女と初めて体の関係になったとき、ムード作りに苦労したものだ。前の彼女は積極的にラブホに誘ってくるようなタイプだったのだが、ってこの話は今はどうでもいいか。


「そういうわけで、君はこれからセックスするために脱がされちゃいます。OK?」

「なんか改めて言われるとすっごく恥ずかしいかも」


 こうして、僕は妻の服を脱がせていった。シャツ、スカート、下着。さらには靴下まで、彼女の肌を覆う布を全て剥ぎ取り、生まれたままの姿にした。見慣れた裸ではあるが、制服を脱がせたというストーリーによって普段の妻とは別のペルソナを帯びている。


「優しく、してくださいね」


 彼女は、初めて抱かれたときと同じ一言をつぶやく。僕も急いで服を脱いで、彼女に覆いかぶさった。


 ***


「……それにしても、こんなに効くなんてねぇ」


 一戦を終え、落ち着いたところで妻がつぶやく。確かに、とんでもなく効いた。これは僕が中高生の時、性欲にあふれていながらもセックスする機会がなかったというフラストレーションが昇華されたものであることは明らかだが、妻がセーラー服を着ていたということ自体に意味があるような気がした。


「こんなこと言っても信じられないかも知れないんだけどさ、中高生の頃の君に会ったことがある気がするんだ」

「えー、なにそれ初耳!どこで?」

「夢の中」


 こうして僕は、その日に見た夢の話と、そこから始まる一日の出来事を話して聞かせた。


 *


「ふーん、それじゃあなたは夢の中で私に会って、それがきっかけで北海道に旅行して、そこで私と会った、ってことなの?」

「そうだったら面白いね、って話だけどね。セーラー服に興奮することの言い訳かもしれないけど」

「まあ、私はどっちでもかまわないけどね。ストーリーとしてはなかなか面白いから、子供が大きくなったら話してあげたら?パパとママの出会いの物語って。……もちろん今日のことは内緒だけど」


 今日、僕は妻のなかに精を放出した。危険日に避妊せずにセックスをするというのは、僕たちにとって初めてのことであった。ちょうど義両親に孫の話をされたばかりというのもあるのだが、よりによって高校生というイメージプレイでそれを行ってしまったのは非常に背徳的である。もっとも、だからこそお互いに余計に燃えたのかも知れない。


「さ、お風呂冷めないうちに入っちゃわないと。先入る?」

「たまには一緒に入らない?」

「もう、……ま、たまにはいっか」


 僕たちは久しぶりに、新婚の頃のような気分で朝までいちゃいちゃして過ごした。この分だとお互いの両親に孫の顔を見せる日は遠くないだろう。コスプレエッチ効果、恐るべし。

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