ぼくのごしゅじんさま

柴犬丸

第1話 多様性っていいよね


 ぼくのごしゅじんさまの髪の毛はピンク色だ。

 ついこの間は黄金色だったし、水色や緑のメッシュが入っていたこともある。


 ずーっとずーっと前は黒かったり茶色かったりしたことがあったから、ごしゅじんさまはカラフルなのが好きなんだと思う。


 だからぼくは思うんだ。


 この地球上にいるたくさんの生き物はみんな色んな『色』を持っている。

 生まれた時から持っている色に愛着があるのはもちろんだけれど、自分で選んだ色を身にまとうのもありなんじゃないかなって。


 だってもう令和だし。


 みんながみんな固定観念にとらわれず、自由に生きるべきなんだとぼくは思う。


 女の子だからランドセルは赤色で男の子は黒。

 そんな昔の決まり事もいまはどんどんと『自由』になっているよね。


 ぼくらはご主人様の好みで色んなお洋服を着たりペットサロンでトリミングをしたりしてイメチェンをすることはあるけれど、それはほとんどごしゅじんさまの好みでぼくの好みではない。


 今の今まで実際に自慢のこのアプリコットの被毛の色を変えたことは無かったのだけれど…。


(なかなか良いじゃない?)


 鏡の中の真っ白なぼくは、友達のミルキーちゃんみたいに真っ白な被毛でとくいげにポーズをとっていた。


 白いぼくもなかなか決まってる。

 気付いていなかっただけで、白い被毛だったらいいな、なんて思っていたのかもしれない。


 カンカンとアパートの階段を上るごしゅじんさまの足音。

 ガチャリと鍵を開けて玄関の扉が開く。


(ごしゅじんさま、おかえりなさい!)


 心の中で全力でお帰りなさいとお迎えをした。

 ぼくのごしゅじんさまの髪の色がピンクだって緑だってぼくのことをとっても大事にしてくれることに変わりは無いし、ぼくだって白くなってもごしゅじんさまが大好きだ。


 廊下の汚れに気が付いたごしゅじんさまがドスドスと台所に向かって悲鳴をあげた。


「誰!? 小麦粉をひっくり返した悪い子は!!」


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ぼくのごしゅじんさま 柴犬丸 @sibairo

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