アンラッキーセブン
安崎依代@1/31『絶華』発売決定!
※
「ふぇぇぇ〜っ!」
床にペタリと座り込み、
それに構わず少年は泣き叫ぶ。
「ついてない〜! 今日、本っ当についてない〜!」
──そりゃそうだろう。今日が『ついてる日』だったら、お前は殺し屋組織の誘拐になんてあってねぇよ。
「お気に入りのボールペン割れるし! 限定発売のプリンは目の前で売り切れるし!! 車に泥跳ねられたし、黒猫に横切られるし、直した寝癖再発してるし、財布スられたっ!!」
ワァワァと情けなく叫ぶ少年に、アサルトライフルで武装した男達は生温かい視線を向ける。
ガランとした倉庫に、完全武装に身を包んだ殺し屋集団が50人以上。この場所と人員と装備が全て、この少年を殺すために用意されたものだということがもはや滑稽にさえ思えてくる。
──こいつが本当に『アンラッキーセブン』なんて呼ばれてる『最凶の壊し屋』なのか? 人違いじゃなくて?
あまりにも簡単に拉致され、あまりにも情けなく
だがふと、少年の喚き声が止まった。
「ん? ボールペンが割れて、プリンは売り切れ。泥はね、黒猫、寝癖、財布」
ピタリと涙を止めた少年は指折り数えながら己の不幸を列挙する。むっつある事象に対して右手の指全てと左の親指を折りたたんだ少年は、ユラリと顔を上げると左手の人差し指を折り込んだ。
「この誘拐でななつめ」
そして、
まるで少年の中身が悪魔にでもすり替わったかのように。
見た者の魂を引き千切るかのような、場の重力を捻じ曲げるかのような、そんな笑い方で、少年は
「残念でした。『アンラッキーセブン』が成立しちゃった」
思わず場にいた男達はアサルトライフルの銃口を少年に突き付ける。だが少年が口元にたたえた笑みは消えない。
「さて。今回の俺の
少年が呟いた瞬間、世界が割れるような音が轟いた。
※ ※ ※
「あーあー……。今回も全滅させちゃった」
パタパタと服の
周囲は一面
その光景を確認して、少年は小さく溜め息をついた。
「あーあ、僕ってばついてない……」
『アンラッキーセブン』
己の身にななつ
「でも僕はこんな能力よりも普通の
またベソベソと泣きながら、少年はトボトボとその場を後にする。
その口元に悪魔のような微笑みがたたえられていたことは、少年の周囲を取り巻いた闇だけが見ていた。
【END】
アンラッキーセブン 安崎依代@1/31『絶華』発売決定! @Iyo_Anzaki
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