アンラッキー7

辺理可付加

ある国でのこと

「おや? あのはなんですか、ガイドさん?」

「あれは我が国公営のですね。月に一回開催されます。そして今日が当せん発表の日なので、ああしてお店のラジオ周りに人が集まるわけです」

「私の国で言うみたいなもんですか」

「おや、そちらの国にも似たようなのがおありで」

「えぇ、もちろん。むしろナントカ主義ですっけ? 配給制の国でも宝くじあるんですね」

「あは。ありますよぉ。人の国を一体なんだと思ってるんですか。あなた方資本主義の人間は違う政治体制を『アンチ資本主義』『資本主義的なことは全て排除されている』『政治によって管理・支配されたディストピア』だと考える」

「すいませんすいません。で、あれ、実際どうなんです? 当たるんです? 私の国じゃ、まず当たらないようなもんですけど」

「当たらないんですか?」

「落雷に当たる程度には当たるらしいです」

「へぇー、そんなんでよく成り立ちますね」

「みんな夢を買っているんですよ……」

「夢じゃお腹は膨れませんよ」

「確かに! ま、それはそれとして。その口ぶりだと、あの宝くじ、結構当たるんです?」

「大体なんかしら当たりますよ?」

「えぇーっ!? いいなぁ! うらやましいなぁ!」

「そりゃそうでないとやってられませんから。あのくじは『アンラッキー7』と言いましてね?」

「こっちで言う○ト7みたいなものですかね?」

「01から37までの37個の数字がありまして、その中から異なる7つの数字を選ぶんです」

「あ、まんま一緒ですね。でもそれだと当せん率もこっちと変わらな……」

「そして発表された本数字『アンラッキー7』が、選んだ数字に一つも入っていなければ一等です」

「なんと!? それじゃハズレの数字は37分の7で……」

「二割弱ってとこですね」

「少なっ! しかもそれって一等みたいなランクがあるってことは、一つでもアンラッキーな数字が入ってたらダメってことじゃないですよね?」

「一つ入ってたら二等、という具合に下がっていきますね」

「すごいじゃないですか! いいなぁー! 私の国でもそうならないかなーっ!」

「あ、ちょうど『アンラッキー7』が発表されるみたいですよ?」

「ほう?」


「発表されるぞーっ! 静かにしろーっ!」

「当たってくれるなよ……」

「今月の生活かかってるのよ!」

「ざわ……ざわ……」



『今月のアンラッキー7は、02、07、11、24、29、33、35でございます』



「うわああああ!!」

「きゃあああ!!」

「よっしゃあああああ!! オラァ!!」


「うわ、すっごい盛り上がりですね」

「あは。どうやら私もオールセーフだったようです」

「おや、ガイドさんも宝くじ買ってたんですか」

「そりゃもちろん。買わなきゃ損です」

「ですよねぇ。それだけ当たるんだったら、誰だって買いますよね」


「ぎゃあああ! 俺11が入ってたぁぁ!!」

「私なんて02と24の二つよぉぉぉ!!??」

「ぐにゃあっ……」


「……なんか、皆さん思った以上に阿鼻叫喚ですね」

「あは」

「いくら一等が当たりやすいから外したらとはいえ、二等であそこまで大騒ぎします?」

「しますよぉ。だって二等は一等の半分しかもらえないんですよ?」

「半分!? ガッツリもらえてるじゃないですか! ○ト7なんて二等は一等の1パーセントくらいですよ!?」

「えぇー!? そんな減らされて大丈夫なんですかぁ!?」

「まぁそれでも泡銭あぶくぜににしちゃな金額ですし……。あ、あの人たちが荒れてるのって、そもそも一等の配当が少ないから半分の二等になっちゃうとほぼ意味ないみたいな?」

「別に一等は少なくないですし、二等も意味なくはないですけど……」

「へぇ。じゃあなんでしょう。一口の金額が高いから絶対に一等当てたい、みたいな?」

「一等は絶対当てたいですけど、くじ自体は安いですよ?」

「そうなんですか? じゃああれだけ当たりやすいんだから、複数口買えばいいじゃないですか。そしたら一等も一つくらい……」

「あ、あのくじ、一月に一人一枚しか買えないんです」

「あぁ、なるほどです。それで月一のチャンスを損した、と」

「損したっていうか、っていうか」

「まぁその辺のニュアンスはどうでもいいですけど。そうだ、ガイドさんは無事一等が当たったんですよね?」

「はい! バッチリです!」

「一等だと一体もらえるんです?」

「あは!






 一月ひとつき分の食料配給券です!」

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アンラッキー7 辺理可付加 @chitose1129

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