主人公の橘梓が突然第4皇女シルビアとして異世界に転生してしまう、乙女ゲーの悪役令嬢に転生のお話です。
シルビアは追放同然に軍隊へ送られてしまうのですが、そこで乙女ゲーでも大人気だった"あのキャラ"ジュリアス・バーンズワース元帥と出会い、彼のそばで働くために出世しようと決意します。橘梓時代のオタクパワー全開で突き進む姿が、なんとも微笑ましくて応援したくなります。
一方で、異世界転生ものでありがちな、いきなり無双したり周りから持て囃されたりといったご都合展開はなく、知識も武力も持たない彼女が図書館で途方にくれたり、話しかける相手さえ選べずにいる描写が新鮮でした。これから彼女がどのように乗り越えていくのか、先が気になるところです。
軍隊ものでありながら硬派な雰囲気はなく、コメディタッチで読みやすく仕上がっています。一般向けのライトな作風なので、乙女ゲーや女性向けラノベが好きな方なら安心して楽しめるのではないでしょうか。
乙ゲー画面に顔から突っ込んだ梓は、気づけばゲーム世界の悪役令嬢シルビアに転生していた。私欲から自身の死ぬ設定を覆し、軍隊で成り上がる野望を抱いた彼女は、更に、国をひっくり返す志をも立てる。
キャッチコピーから、ノリの軽いギャグ系SFかな?と思ったのですが違いました。いや、違わないけど違うんです。楽しいコメディパート満載だし、転生の経緯もブッ飛んでます。でも骨組みがすごくしっかりとしていて、戦闘シーンや、そこで活躍する人間たちがめちゃくちゃにカッコいいんです!
物語には謀略や戦術といった要素が絡み、臨場感・緊迫感・SF感溢れる攻防や戦争のシリアス面なども描かれます。その中でキャラ達は何を抱き、背負い、変化するのか。
群像劇の面も持つこちらの作品では、様々なキャラや過去にもスポットが当てられ、それぞれの持つドラマが強く読者の心に迫ります。
主人公は自分のプレイしていたゲームに転生しますが、それによる先読みなどのアドバンテージはなく、チートスキルも授かりません。勉強しまくって大手企業に就職した前世と同様、実力で、そして足りないところは周りの手を借りて、結果を掴み取っていきます。一方で、舞台がゲーム世界であるからこそ、キャラ設定や順調に成り上がっていく進行に無理を感じません。そういったラノベ感と骨太感が上手く噛み合っているところにも面白さを感じました。
個人的に、作者様のセンス溢れる言葉選びや豊富な語彙も推したいポイントです。この作品に限らず、巧みな表現や知らなかった言葉、様々なジャンルにいつも出会わせていただいてます。
真面目な面を多く取り上げましたが、ライトでヘンタイな、キャラ同士でふざけ合うギャグパートもふんだんに含まれております。ふんだんに!
しっかりとした骨組みの中で、コメディやシリアス、ドラマが変幻自在に繰り広げられる、緩急ついた読み応えのある作品です!
これから物語はどんな過程を経て、どこに着地するのか。楽しみです。
※第55話までを読んでのレビューです。