終章 神様を食べた少女

 ある綺麗な湖のほとりに、何を食べても美味しいとは言えない少女が住んでいました。

 炊きたての熱いお米を食べても、柔らかくついたお餅を食べても、少女は美味しいとは言えませんでした。


 だから少女はある森の奥深くにいる、人に食べられるために生まれて死ぬ神様に会いに行きました。

 美しい姿をしたその神様の肉は、食べた者が死んでしまうほどに美味しいと聞いていたからです。


 少女が訪ねてきたことを神様は喜び、自らの身体のすべてを少女に与えました。

 神様の頭を、神様の足を、神様の腸を、少女は手に入れたものを残さず食べ尽くしました。


 だけど少女は、神様の肉を食べても美味しいとは言えず、その味に死んでしまうほど満足することはできませんでした。

 美しくて美味しい神様の肉の味も、少女には足りないものだったのです。


 そうして神様を食べた少女は今日も死ぬことなく生きていて、神様の肉よりも美味しいものを探しているのでした。

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神喰いの花嫁 名瀬口にぼし @poemin

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