屋敷で奴婢扱いされているミンギルとテウォン。体格や能力、すべてが正反対の二人はお互いに足りないものを補いあって生きていた。何事も分けあい、いつでも一緒だと信じていた二人の関係はしかし、国に訪れる変化と共にゆっくりとズレていくのだった。
ミンギルを通して「朝鮮」を擬似体験できたように思います。それは緻密に描かれた暮らしや文化等であったり、重い歴史であったり、彼が物事に向ける思考・感情であったり。そういったものを私も実際に目にし、肌で感じ、時にミンギルの感情を直に受け取り、時に一歩引いた所から彼やテウォンという人間を理解しながら読むことができたように思います。
二人の、辛い今を耐え未来に期待する姿に、切ないような苦しいような気持ちになりました。彼らにとっての幸せや「もしも」について考えずにはいられませんでした。
幸せと言えば一時のものではありますが、ミンギルを通して見る食べ物が本当に美味しそうで、幸せが伝わってきて、生きているという感じがしました。特に薬菓の、まず蜂蜜がきらきら光ることに喜ぶシーンが好きです。
世界の歴史、そしてミンギルとテウォンの二人を通して様々なものを知り、感じ、体験させていただきました。物語の中に入り込める、貴重な読書体験でした。
素晴らしい作品をありがとうございました!