運命に導かれた少年と少女の儚くも美しい旅を描いた物語。序盤から「僕はこの光景を一生忘れることはないだろう」という衝撃的な独白で始まり、読者を一気に引き込む力を持っています。
主人公である「僕」は、幼い頃から孤独を抱えて生きてきました。ある日、夜明けの花畑で美しい少女と出会います。幽霊である彼女の願いを叶えるため、少年は自らの過去と向き合い、旅立つ決意をします。読み進むにつれて、少女が魔女の森へ向かう理由が徐々に明らかになります。
「僕」は過去の傷を抱えつつも純粋でまっすぐな少年として描かれています。一方、少女は明るく無邪気に振る舞いながらも、どこか儚い雰囲気を持っています。彼女の笑顔の裏に隠された秘密とは。また叔父との関係や村の人々との交流が少年の孤独と成長をより際立たせているのも良いです。
美しい風景と感情豊かなキャラクター。旅を通して成長する少年と、彼に運命を託す少女。運命に導かれた二人の旅の結末がどうなるのか、目が離せません。
両親を亡くし、辺鄙な田舎で叔父さんと二人きりで暮らしていた少年は、いつも行く花畑で一人の少女と出逢う。
魔女に囚われ奪われた身体を取り戻したい少女の願いを叶える為に、少年は旅に出ることを決意するが……。
この物語の主人公は至って平凡な少年です。
けれど、少女と出会い、旅をし、おちゃらけた音楽家との愉快な舌戦。少年をからかう少女とのやりとりや音楽家の男との掛け合いは、読み終えた後に少しの寂しさを持って思い出してしまいます。
たった十日の旅路の中で、少年が出会ったもの、知ったもの、そして決意したもの。
それは、魔女の森に辿り着いてから巻き起こる怒涛の展開から結末に至るまで、少年にとってどれもが不可欠なものだったと感じます。
少年のひたむきさ。
少女の葛藤。
男の親心?
そして、英雄となった兵士の信念。
全てが心に染み入るものでした。
基本的に一人称ですが『登場人物が名前で呼ばれない』というのも、この物語に深みを与えているように思います。