短編83話  数あるあけましてを一番乗りっ

帝王Tsuyamasama

短編83話  数あるあけましてを一番乗りっ

「それじゃあ静希しずき、今年もよろしく頼むよ」

「はい」

 私たち雪谷ゆきたにのみんなと、お隣さんで仲良しの浅上あさがみ家のみんなとで、毎年合同で行われる、新年明けましておめでとうございます会。

 そこでなぜか、私、雪谷ゆきたに 静希しずきが、新年のごあいさつを申し上げることも、毎年恒例で……それを言い終えたところで、

「あら? 雪ねぇ。いつの間にこんなに降ったのかしら」

「うぉ! 本気マジかぁ!」

 翔真しょうまくんのお母さんが、窓の外を見て雪が積もってきていることに気づいたけど、翔真くん、大はしゃぎ。

「静希、いくぞっ!」

「え、えっ?」

 はわ~翔真くんに引っ張られて~。


 私もブーツを急いで履いて、外に出て、翔真くんに追いつきました。

「雪だ雪雪ー!」

 翔真くん早いよぅ。

 雪降ってます。地面も白くなっちゃっています。塀も郵便受けも街灯もあっちもこっちも。

「一番乗り~!」

「寒いよ?」

 はんてん置いてきちゃった。手袋もない。

「なあ静希ー」

「なに?」

 さっきまでぴょんぴょん跳ねていた翔真くんが、こっちを向いた。

「オレさ。静希のこと、すっげー好きだ!」

(…………ふえぇぇぇっ?!)

「え、あ、しょ、しょぉまくん……?」

 なになに、えっ、これなにぃ!?

「あーやっと言えたぁー! 静希はオレのこと、好きかー!?」

「あああちょっと翔真くん、ここお外だよぅ」

 深夜だけど、元日だから、だれか歩いているかもしれないしぃっ。

「もし好きじゃなかったら、断ってくれてもいいんだぞーっ。その時は、諦めるっ!」

「ええぇっ? あ、え、えと、あのっ」

 急すぎるよぅ……でも、こうして私にいろんな表情を分けてくれる翔真くん。私にないもの、いっぱい持ってる翔真くん。

「…………わ、ゎたしも、ちょっと……すき、か、も……」

「よぉーっし! 決まったな! 父さーん母さーん!」

「えええ!! ま、待って翔真くん、え、あの、翔真くーん!!」

 んもーっ……でも、なんだかやっぱり、楽しいなっ。

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短編83話  数あるあけましてを一番乗りっ 帝王Tsuyamasama @TeiohAoyamacho

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