鳥脚の考古学者の少女アルカイヤと、女癖の悪い錬金術師の男ガヴィが出会い、堅牢な守りを誇っていた“魔女の国”滅亡の秘密を解き明かす姿を描いた作品。一見して関係ないような出来事はしかし、燃え広がるように意味を持って連なり、過去を、現在を、未来を照らし出す。
アルカイヤとガヴィ。魔女の国の後継となる“魔女の街”での2人の出会いが、後に歴史に名を残す「火喰いのアルカイヤ」を生む──。
本作の魅力の1つは、文学的な、硬さがありながらも読みやすい、そんな美しい文章で描かれる小説世界そのものです!
どこか物悲しい魔女の街の情景。朽ちて久しい、野花が咲き誇る魔女の国の遺構。清らかな水をたたえる泉。そして、そこに生きる魔女たちのひっそりと慎ましやかな生活。その全ての情景が文体とよく馴染んでいて、本作で描かれる世界を際立たせています。
また、何より、歴史を解き明かすという本作のテーマと見事にマッしている。
そのおかげで本作の雰囲気を余すことなく堪能でき、物語に入り込みながら楽しむことができます。物言わぬ木や土の声を聞いて、過去に葬られた真実を解き明かす。考古学のロマンがひしひしと感じられて、まるで登場人物と同じように、謎を解き明かしている気分になることができました。
そんな物語を引っ張っていくのがアルカイヤとガヴィなのですが、これがまた名コンビ!
もの静かでありながら、内なる炎を秘める賢明なアルカイヤ。彼女が謎を解明しながら物語を前に進める様には爽快感があります。他方、ガヴィの飄々とした言動が物語に程よい軽さを生んでいて、本作の少し重いテーマに読みやすさを与えてくれます。しかも、疑うことなき格好良さもあって…。まさにズルい男ですよね…。正反対の2人だからこそ、どんな謎にも障害にも立ち向かえるのだろうという気がしてなりません。
人の歴史は火の歴史。一貫して見られるテーマ性。その火を喰うとはどういう意味か。是非読んで、確かめてみてくださいね。
美しい文章で描かれる魔女の街を舞台にした、謎と“火”を巡る物語。どんな人にもオススメできる、ロマン溢れる作品です!
異世界ファンタジー作品は数あれど、歴史を深堀できるほど作り上げられたものはごくわずかなのではないでしょうか。その時代に生き、死んだ人々の足跡の重なりを感じられる考古学ロマンが、こちらの作品には詰まっています。
まず、魔女の設定が素晴らしい。
尖がり帽子を被って魔法の杖で派手な呪文を唱えたり怪しい薬を作ったりする魔女のイメージを見事に払拭してくれた、女ばかりの『花山羊の民』という設定。頭に山羊や羊の巻角が生えているのです。もうこの時点で「好き!」となりました。
それに魔女の街を彩る『癒守花』の描写がとにかく美しい。これについてはぜひ第6話を読んでほしいです。読めばわかる……!
そして物語の主人公、鳥人類の生き残りでもある考古学者のアルカイヤ。タイトルの『火』が何の火のことを表しているのか、第一章を通して描かれて行きます。作者様は本当にタイトル回収がお上手な方です。作中に登場する様々な火に想いを馳せながら読んでいただきたい。
物語が広がる余地を十二分に残したまま第1章が完結しています。この世界観に浸るなら今がチャンス!!アルカイヤ先生とその助手ガヴィの熱い戦いとロマンあふれる歴史への探求を楽しんでください!
素敵な賢いヒロインをありがとうございました!
濃厚なファンタジー世界観の中で、失われた歴史を研究解明し、後世へと継ぐ考古学者のアルカイヤ。
とにかく、ブレずに歴史の痕跡を追い求め、また不都合による改変や隠蔽を跳ね除ける強さがとても好きです。
本当に歴史というもの、理不尽であり不都合に塗れたものです。
作品の展開にも、この理不尽さがありありと、詰まっています。
でも、アルカイヤはその理不尽であり、不都合なことであっても受け止め、歴史を守るという意志の強さに感服しました。
本当に彼女の台詞や行動から、呼んでいる私にまで、その人間が灯した歴史という火の熱さというのが伝わってくるのです。
これが、たまらなくて、とんでもねぇ作品読ませていただいてる!毎話毎話楽しみに読ませていただきました。
また、アルカイヤだけではなく、バディとして出てくるガヴィ。このキャラクターがこの作品のコミカルや、癒やし、サプライズを生み出してるなと思いました。
本当に最後まで面白い、重厚なファンタジー世界の賢いヒロイン作品でした。
皆様、ぜひ読んでほしい作品です。