くらげをモチーフにした美しい物語

このお話の主人公である美月は、小鳥遊という既婚男性と不倫しています。小鳥遊さんの奥さんはうつ病で、なかなか別れてくれません。苦しい関係にしがみつかずにはいられない美月の心理描写は、読んでいると一緒に苦しくなるほどです。水族館で展示されていたくらげみたいに漂っていたい美月でしたが、それでも後半、あることをきっかけに前を向く決心がついたときには、彼女と一緒にとても晴れやかな気持ちになれました。作者さんお得意の香水の描写が随所に登場するのも嬉しいところ。ラストも晴れ晴れとして美しく、美月の門出をともに応援したくなります。本当に素敵なお話です。