新米証券マンと顧客である春風さんの心のふれあいに思わず涙が溢れます。前半はすべての新社会人が通る苦悩と葛藤がありありと書かれていて、胸がぎゅっとなりました。それでも最後まで読み終わってみれば、主人公を見守り続けてくれた春風さんの優しい眼差しが目に浮かびます。証券にまつわる専門知識がちらほら登場しますが、お話に集中できる絶妙な匙加減でわかりやすく説明されているので苦になりません。無料でこんな素晴らしいお話を読むことができ、カクヨムに登録して本当によかったと思えました。働いている方にも、これから社会にでる方にも、心洗われる素敵な出会いがありますように。
僕は新卒で入社したITベンチャーで営業部に配属されました。
もちろん、入社したてで名刺交換を覚えたばかりの僕は、右も左もわからず、よくわからないまま営業ノルマを課せられて放置されて、一件も契約を取れず、上司に詰められテレアポ用の受話器片手にデスクの上で泣いていました。
そんな日が続く中、半年ほど経ったある日、僕にも春風さんが現れました。
僕にとっての春風さんは山口さんという方でした。
彼は、僕を信じて会社のHP作成を発注してくれ、一年後にまた縁があり、今度はSEOとHPのセットで発注をいただきました。
数字だけ見ると、僕一人分の年収も賄えないほどの小さな額なのですが、コロナ禍もあって対面で会えなかったおかげで契約の齟齬があり、コミュニケーション不足で先方の意図と違うものをデザイナーが作ってブチギレられ、作り直しが何回も発生したりと赤字を出してしまいました。
失敗ばかりでしたが、顧客折衝のイロハを学ばせていただき、僕が会社をやめるときも、新天地へ向けて温かい言葉をかけてくれる、まるで春風のような方でした。
山口さんも、元IT関連の仕事をしていたそうなので、おそらく僕にシビアに当たってくれていたのも、僕の成長を見守ってくれていたからかもしれないと今になって思います。
この手紙を読めば、あなたにとっての春風さんがいた事を、きっと思い出せるはずです。