十年分の全てを捨てて、君をさらってしまいたい

明治九年。
太政官は帯刀禁止令（廃刀令）を布告した。
しかし、武士の子息や身分にこだわる輩は反発し、巴の両親は殺され春芳の父も死んでしまった。

　月日は十年立ち…、ここで見る東雲は、今日が最後と春芳は一人での仇討ちを決意する…。

　夜の闇が徐々に茜色に染まり、忘れることなど出来ない記憶をたどる。

　泣き叫ぶ子供の声と、肌を焼く灼熱の炎…。真っ黒い黒煙を空に吐いて燃え盛り、庭にある桜を巻き込んでゴウゴウとうねる。　

「この子を頼むぞ、春芳！」
　　
　そう言って、春芳の父は再び燃え盛る屋敷に飛び込んでいった。
　小さな浴衣姿の少女を春芳に託して…。

　それからすぐ…、屋敷は音をたてて崩れ落ちた――。

　春芳と巴の鍛錬は、そこから始まる…。