伽藍堂

結城綾

伽藍堂とぬいぐるみ

ここではぬいぐるみ=人形の一種として語らせていただく事をご了承願いたい。

語り手は伽藍堂がらんどうの主人であるわたくしこと月城朱つきしろあやだ、お初にお目にかかるだろうがよろしく頼む。

伽藍堂は江戸時代から存在する由緒ある建物、私はその十九代目当主なのだ。

さて、人形は古くから人間の形を模倣した愛玩品として人々に愛されていっている。

人形は古くから「雛型」を作り心の支えにしていっていき、古いとは人類の始まりである約一万年前と等しい時期からであるのは周知の事実。

人形には呪術的役割による恐怖の一面と美を追求した所謂いわゆるかわいらしい!系である……すまない少々取り乱してしまった。

私は伽藍堂にて骨董品の売買をしている個人事業者で同時に「呪術師」の活動も両立している。

先代の時代には日本人形や西洋人形をきっかけに来るお客さんや「依頼者」も多かった。

唯現代ではテディベアを代表するぬいぐるみをご所望である方が圧倒的に割合が高い。

手芸として手軽に作れるようにはなったものの、同時に呪いをかけやすくなったのか呪術間のトラブルも後をあえない。

ここで一つ、人間はどのような構成をしているか。

人間は外側の肉体、内側の魂、そして魂に刻まれる記憶で構成されている。

一方人形は外側である肉体だけの不安定で空洞化した人間と喩えるたとえることができようか。

ならば足りない魂をどこから持ってくるか_____それは呪いたい相手から持ってこればいい。

そうして魂を封じ込めて、刃物やらで刺してしまえば相手は死んでしまう。

こう言った人を呪い殺すのを「黒い呪術」と私達同業者の中で呼称されている。

だが不思議な現象もあったらしい。

ある日に呪術をしようとした女性、使用する人形は長年愛していたテディベア。

恋人に裏切られて捨てられてしまったのと、恋人を略奪した友人を心底恨んでいたのだろうな。

準備を進めていよいよ呪術本番とさしかかった時、なんとぬいぐるみが動いたらしい。

何事かと驚愕していた彼女を差し置いて必死に首を横に振っていたらしいな。

そして私達同様の日本語を話しだしたのだ。

その内容は彼女の幼少期から愛してくれた事への感謝と、だからこそ抱き止めていたのだ。

ぬいぐるみしか知り得ることが出来ない情報で確信して彼女は暗涙して呪術の中断をしたのだとか。

私はこの話を耳に入れてこう感じたのだ。

人形は人間の模型……つまりより完璧に等しければ等しい程魂が宿るのではないか。

その条件は長年の親密で親愛な関係、生物だけに限らずどの物体にも。

さらにそれにより記憶も会得するのではないか……とね。



長時間突き合わせてしまったね、今回はこのぐらいにしておこう。

またこの店に用があれば、いつでも引き受けよう。



空の肉体にはくれぐれにもお気をつけて。








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伽藍堂 結城綾 @yukiaya5249

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