第13話 サマソ!
「随分と素敵な夢をお持ちな様で。モモミさんは」
断った理由。
そして目指す先を聞いて、俺はモモミに白い眼を向ける。
まあ彼女の目的を一言で纏めるなら、超逆玉だ。
そして今回は、男爵家程度で満足できないから袖にした訳である。
想像以上にいい性格してるわ。
この女。
「見事なまでの寄生虫マインドだな」
「い、良い女が良い男を捕まえるのは自然の摂理です」
俺の嫌味に、モモミが不機嫌そうに言い返してくる。
その考え自体は、まあ間違っていないだろうとは思う。
優れた者が優れたパートナーを選ぶのは、不自然な事だろうしな。
――問題は、モモミが良い女でも何でもないという点である。
彼女の見た目が魔物うけが良いのは事実だ。
貴族のボンボンが遠めから一目ぼれするぐらいだからな。
クラス内でも、どうやら相当人気もあるようだし。
俺には全く理解できないが。
まあそこには目を瞑って、凄い美人という事にしておく。
が、それを加味しても、やはり俺にはこの女が良い女とはとても思えなかった。
都合が悪くなったら距離を置いていた強者に泣きつくようなゴミが、良い女の分けがない。
こいつは運よく手に入れた美貌って名の皮をかぶっているだけの、中身のないスポンジ女だ。
俺から見たら完全にゴミである。
「何がいい女だよ。完全に見た目頼りじゃねーか。それで貴族の家に上がり込んでも、お前に求められるのはただのお人形さんだぞ?」
地球でも、とにかく金を持ってる相手と結婚したがってる様な女はいるが、中身の求められない形でパートナーと生涯を共にするとか、何が楽しいのか俺には全く理解できん。
しかも相手は貴族だ。
平民の嫁なんて、見た目が衰えた時点で冷遇してくるのは目に見えている。
え?
お前は貴族の事を知っているのか?
知らん!
が、大体想像つくじゃん。
金持ってるやつが、古くなった人形を後生大事にすると思うか?
思い入れがあるならまだしも、見た目だけで選んでるんだぞ?
「構いません!それでも私は素敵なエリートをゲットしたいんです!」
モモミが堂々とそう告げる。
やべぇ、こいつガチもんだ。
「まあそう言うなら、もうこの話はここまでにしとこう」
モモミの人生だ。
自分の信念の元突き進むのなら、俺の言葉は余計な雑音でしかない。
正に大きなお世話って奴だな。
「じゃ、ここからは本題に入ろう」
俺は周囲に結界を張る。
これで俺とモモミの姿は、周りの奴らから見えなくなった。
ああ、俺達を盗み見してる奴は別な。
「本題……ですか?」
「ああ。俺はお前みたいなタイプが大っ嫌いだ。そしてそんな奴が俺を利用した……言いたい事、分かるな?」
見た目だけでマウントを取り、世の中を渡って行こうとするタイプの人間。
俺はそういう奴が大っ嫌いだ。
まあ、俺には見えないだけでそういう奴らも努力しているのかもしれない。
だから否定はしないさ。
そう、否定はしない。
但し、俺に関わらなければ、ではあるが……
コイツは俺を利用した。
被害者だからと手を差し伸べてやった訳だが――掴んでみたらうんこだったで御座る。
とくれば、手を洗わないと駄目だよな?
もちろん相手の血で。
「あの……軍曹……おっしゃってる意味が良く分からないんですけど……」
分からないとか言いつつ、モモミは顔を引きつらせながら後ずさる。
「考えるな。感じろ。つまりお前はこれから酷い目に合うって事だよ」
モモミが感じるのを悠長に待ってるのも億劫なので、一緒に正解も答えておく。
これが時短って奴だ。
「な……殴ったりしないって言ったじゃないですか……」
「ああ、あれはもう消費期限切れだ」
俺の言葉は、発すると同時に消費期限が切れる仕組みになっている。
でないと、物事に柔軟に対応できなくなってしまうからな。
まあだが単に嘘をついた様に思われるのも癪なので、殴るのではなく鼻くそで……
いや、貴重な鼻くそをウンコなんかに使うのはもったいないな。
蹴りでいいだろう。
盗み見てる貴族も、鼻くそで吹き飛んだら何が起こったのか理解できないだろうしな。
「安心しろ。カエル野郎の兼は俺がちゃんと処理してやるから……お前は安心して寝てろ」
「ぐ、軍曹!待ってください!私考えを改めますんで!!」
「こいつぅ。猛獣の折に手を突っ込む様な真似をしておいて、今更だぞー。サマソ!」
「ブゲッ!?」
縦回転の蹴りがモモミの顎を捕らえ砕く。
やっぱデートの締めと言えば、サマーソルトキックだよな。
「まったく。無駄な一時間過ごさせやがって」
さて、次はカエルの処理だ。
デストロイヤー~理不尽がまかり通る魔界で、異世界転移してきた勇者の俺が一番の理不尽な件について~ まんじ @11922960
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