第12話 無課金勢
「ねえダーリン、あの店に行きましょう」
モモミ猫なで声ですり寄って来る。
――今俺は、モモミとデートしていた。
人生初デートをこんな目玉だらけの女としたくはなかったが、しぶとく粘られてしまったからな。
結局折れて、しぶしぶ承諾したのだ。
我ながら甘い事である。
因みにモモミが俺にデートを申し込んだのは、貴族のボンボンにフィアンセ云々の話を信じさせるためだ。
そのためこのデートには、そいつがこっそり付いて来てたりする。
まあ俺にはバレバレだが。
「軍曹と呼べ。殺すぞ。後、女物のジュエリーショップになんざ誰が行くか」
「う……」
俺の言葉に、モモミが顔を歪める。
デートをするとは言ったが、希望通り振舞うなどとは言っていないからな。
行きたくない所には行かないし、ダーリンと次読んだら問答無用でキン肉バスターを仕掛けてやる。
え?
キン肉バスターなんてしたら、デートじゃないってばれてしまう?
そんな事はない。
デートと言えばスキンシップ。
そしてキン肉バスターは、人前で出来る最上級のスキンシップだ。
だから、追跡してきてるカエル野郎もデートかどうかを疑ったりはしないはずである。
因みに、キン肉バスターが何かわからないならキン肉マンでググると言い。
ああ、安心してくれ。
決して卑猥な物ではないから。
なにせ正義の超人が人前でバンバン披露してるようなものだからな。
健全そのものだ。
たぶん。
「えっと軍曹、あそこなんかは……」
「興味ない」
「じゃあ、あの店なんかは……」
「断る!」
とにかく、どこかによろうとモモミがアピールしてくる。
が、俺は知れら全てにおいて否を突き付けた。
何故なら、店に入るとお金がかかるからだ。
夜中に頑張って出歩いて悪事を働くカスどもを見つけ、そいつらから奪い取ったお金。
そう、尊い尊い労働の対価を、モモミのブスの為に散在するつもりはない。
なのでこのまま散策だけで押し通す。
ざ、無課金って奴だ。
え?
頼まれたんだから、金はモモミに払わせるか後で回収すればいい?
それ死ぬほどかっこ悪いじゃん。
絶対みみっちい奴だって思われるに決まっている。
なので却下。
因みに、この魔物達の世界は以前いたファーレスより文明が進んでいるため、街中に映画館まであったりする。
「えーっと、あの……軍曹。デート何で、出来たらどこかに寄って貰えるとありがたいんですけど……」
1時間程街中を歩き回った所で、モモミがそう言って来た。
どうやら、何が何でも俺を店に引きずり込みたい様だ。
だがそうはいかん。
「デートなんてものは、カップルの数だけ存在する物だ。常識に捕らわれるな」
「いやでも……」
「俺達らしさを貫けばいい」
そう、それが無課金である。
それ以外は認めない。
「それより、お前はなんで後を付けてるカエル野郎が嫌なんだ?」
俺から見れば、目玉まみれの気持ち悪い女と、カエル野郎ならお似合いに思えて仕方ない。
一体何が不満だと言うのか?
「えーっとですね……実は私――」
「あ、お為ごかしは入れるなよ。俺はお前の作り話を面白おかしく聞くつもりはないから」
モモミが嘘の言い訳を言おうとしているのが透けて見えたので、釘を刺しておく。
女の考えたメルヘンストーリーなど聞きたくもないからな。
「ああ、いや……そのー……」
「そんな言いにくい理由なのか?安心しろ、殴ったりしないから素直に言え」
腹が立たない限りは。
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